新規参入が難しい安定した業界 航空機部品業界をご紹介します
自動車業界や自動車部品業界と比べて、航空機部品業界は就職先としてイメージしづらく、志望している理系学生は多くないかもしれません。
しかし航空機は約300万点と、自動車の100倍ほどの部品から構成されており、様々な機械や部品から構成されているため航空機部品業界は非常に裾野の広い業界となっています。
今回はそんな航空機部品業界について、そもそも航空機部品にはどのようなものがあるか、業界の今後や特徴がどうなっているかをご紹介します。
航空機部品とは
航空機部品とは航空機を構成する様々な部品のことで、航空機部品業界では、これらの航空機部品を製造し、航空機の製造をする会社へ販売をしています。
航空機部品は機体、エンジン、装備品の大きく3つに分類することができます。
それぞれについて、構成する部品や航空機での役割をご説明します。
エンジン
エンジンでは前方から吸気し圧縮した空気を燃料と混ぜて燃焼させることで発生する燃焼ガスを後方に排出することで推進力を得ます。
エンジンは複数のモジュールによって構成され、エンジン前方の空気を吸気するファン、吸気した空気を圧縮する圧縮機、高圧の空気に燃料を噴射し燃焼させる燃焼器、発生した高温高圧ガスから回転の動力を得るタービンなどから構成されています。
高温高圧の状態を長時間安全に維持するためエンジン部品は特殊な合金でできており、切削工具による加工が難しく、高い技術力が求められます。
機体
機体は、乗客や貨物を収容する胴体、進行方向と垂直に付き飛行機を浮かせる力(揚力)を生み出す主翼、飛行機に安定をもたらす尾翼、着陸の際の衝撃を吸収する降着装置などから構成されています。
機体は軽くて丈夫な素材で作る必要があるため、ジュラルミンと呼ばれるアルミニウム合金が主に使われることが多いです。
エンジンで生み出した推進力によって主翼の周りを循環する空気の流れが生まれ、翼の上面の空気の圧力が小さくなり、下面との圧力差によって揚力が発生します。
このように、エンジンの推進力が主翼で揚力を生み、航空機は空を飛ぶことができます。
装備品
装備品は航空機の機体に搭載される機材のことで、自動操縦システム、空調システム、エンジンの熱制御システムなど航空機を管理するためのシステムや、シートやライト、液晶パネル、ドアなどの室内の装飾品があります。
航空業界の現状と見通し
日本の国内線、国際線の航空旅客数の推移を表(参照:国土交通白書 航空輸送統計調査)に示します。
リーマンショックや東日本大震災により日本の乗客数が減少した2010年頃以降、順調に伸び続けていた航空業界ですが、コロナ禍による移動制限で大きな打撃を受けました。
2020年には大手航空会社の旅客収入が前年度の約20%になり、航空会社だけでなく航空機部品メーカーも採用を停止するなど、大きな影響がありました。
現在は徐々に回復してきており、IATA(国際航空運送協会)によると、アジアは2025年頃にコロナ禍以前の水準に回復する見込みです。
このように、航空業界は世界情勢や景気による影響を受けやすいという特徴はありますが、新興国の経済成長やグローバル化によって、世界的にみれば中長期的に成長していく業界だとみられており、ジェット旅客機の需要は2019年から2040年までに約1.6倍になると見込まれています。航空業界全体が成長していく中で、どれだけ日本の航空機部品メーカーが世界でシェアをとっていけるかが今後の課題となっています。
航空機部品業界における日本の立ち位置
車や船舶と比べて航空機の完成品メーカーはかなり少なく、中型・大型航空機はボーイング社とエアバス社が、小型航空機はボンバルディア社とエンブラエル社が世界シェアの多くを占めており、完成品は日本ではほとんど作られていません。
日本の航空機部品業界では、これらの完成品メーカーから直接エンジンや機体の一部を受注する一次請け企業や、一次請け企業から部品などを受注する二次、三次請け企業があります。
日本の航空機の世界シェアは約5%と低く、トヨタが世界シェアトップをとっている自動車業界や、世界3位の20%のシェアをとっている造船業界に見劣りする結果となっています。
ここからは、航空機部品業界をエンジン・機体、装備品で分け、それぞれにおける日本の立ち位置をご紹介します。
エンジン・機体を作る日本メーカー
日本では、主に大手重工系の企業がボーイングやエアバスといった完成機メーカーに対して機体・エンジン部品の一部を生産し販売していますが、エンジン市場における国内主要3社の世界シェアは約6%程度となっています。
特にボーイング機において日本のメーカーが担当する割合が増えてきており、ボーイング787の機体構造の約35%を日本が作っています。
装備品を作る日本メーカー
装備品は航空機価格の約4割を占める大きな市場を持っていますが、装備品の多くは欧米のメーカで製造されており、日本メーカーはまだ納入実績が少ないです。
しかし、国内装備品メーカーでも、航空機タイヤにおいてブリヂストンが、ギャレー(厨房)やラバトリー(化粧室)においてジャムコがトップシェアをとるなど、一部の装備品では日本メーカーが高いシェアを誇っています。
航空機部品業界の職種
航空機部品業界の技術系の職種としては、数年後の新製品に繋がるような技術の研究をする研究・開発職、製品の設計をする設計職、実際に工場で製品を作る製造職、工場で作られる製品の品質や生産効率を管理する品質管理・生産管理職、溶接や機械加工をして製品を作る製造職などがあります。
採用において優遇されるのは機械系だけでなく、取り扱う製品や採用している職種によって企業は様々な専攻の学生を求めています。
例えば、生産設備を自社製造している会社であれば電気系、製品に使う材料の研究開発をしている会社であれば化学系、航空機のフライト管理システムを作っている会社であれば情報系の学生を求めています。
技術職においては理系学生全般が優先的に採用されることが多いですが、その中でもよりマッチしている企業を見つけるために、どんな製品を作っていて、どんな職種があるのかを事前に下調べしておくようにしましょう。
航空機部品業界の特徴
参入障壁が高い
航空機は1機あたりの部品数が200万〜300万にもおよぶ非常に裾野の広い産業であり、各分野に強みを持った日本の中小企業の参入が期待できる分野です。しかし、航空機部品業界の特性によって参入障壁が高くなっており、国内の航空機部品メーカーは1000社程度となっています。
航空機は高い安全性が求められるため、航空機部品業界に参入するには非常に高い品質管理基準をクリアし、認証を取得する必要があります。また、参入するためには巨額の投資が必要となり、これも参入障壁を高くする要因となっています。
安定している会社が多い
前述の通り新規参入が難しい航空機部品業界ですが、裏を返せば、一度参入することができれば安定的に収益を得られる業界だといえます。
参入障壁の高さに加え、製品が販売されてから終了までの期間を意味する、製品ライフサイクルが数十年ととても長いという特徴があります。
参入障壁が高く、製品ライフサイクルが長く、業界全体も中長期的に拡大傾向にあることから、継続的な収益を見込むことができ、航空機部品を主に取り扱っているメーカーは安定した企業が多いといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本の航空機の世界シェアは約5%と低く、世界トップシェアをとっている自動車業界や、世界3位のシェアをとっている造船業界と比べて、シェアにおいては見劣りしています。
しかし、航空機市場自体が非常に大きく、中長期的に拡大傾向にあることや、参入の難しさによる企業の安定性など、航空機部品業界ならではの良い特徴もあります。
この記事を読んで航空機部品業界に興味を持った方は是非、説明会に参加やOB・OG訪問等をしてみてください。
また、自動車部品業界にも興味のある方は「日本の主要産業の一つである自動車部品業界とは?自動車の仕組みや部品まで詳しくご紹介します」を、船舶部品業界にも興味のある方は「日本の中小企業が世界トップシェア?国内外で高シェアを誇る船舶部品業界をご紹介」をぜひご覧になってください。
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