モノづくりの原点?様々な材料を社会に供給している資源業界とは

2023年7月10日 更新

私たちの身の回りには家電や携帯端末、輸送機械など様々な製品があり、これらの製品は資源・原材料をメーカーが仕入れて加工することで作り出されています。
そのため、資源・原材料を扱う資源業界はモノづくりの最初に位置しており、現代社会にとって重要な役割を担っています。

しかしながら、資源業界と聞いても、就活先としてはイメージしづらい方も多いのではないでしょうか。本記事では、ものづくりにおいて重要な役割を担う資源業界について就活生向けにわかりやすく説明します。

資源業界とは

資源業界について、資源の定義から業界の概要まで説明します。

資源とは

資源とは人間の生活や産業等の活動の為に利用可能なものをさし、広義には人間が利用可能な領域全てであり、狭義には諸活動に利用される原材料をさします。

資源の中には人的資源や観光資源、森林資源、水資源、水産資源などもありますが、本記事では特に金属、非金属、化石燃料(エネルギー燃料)などを含む鉱物資源について紹介します。

資源業界とはどのような業界か

資源業界とは、鉱物資源の採掘、製錬(精製)、加工のいずれかの工程を担い、様々なメーカーに鉱物資源を供給している業界です。

鉱物資源の流通の流れを以下の図にまとめました。

資源業界には、採掘(採鉱)を行う鉱業業界、製錬や加工などを行う鉄鋼、非鉄金属業界、化石燃料の精製分離や卸売りを行う石油・天然ガス業界があります。それぞれの業界の概要についてご説明します。

鉱業業界とは

鉱業業界とはものづくりの上流工程に位置しており、鉱物資源を採鉱(採掘)して、製錬・精錬・加工を専業で行う鉄鋼・非鉄金属・非金属業界等に供給または自社で製錬を行います。
最終的に建設、機械、電子部品、化学等の様々な業界へ構造用材、電子材料、機能性材料等の素材として流通しています。

鉱業業界の中でも規模の大きな企業では鉱物資源の採掘を行う鉱業だけでなく、鉄鋼、非金属の製錬、加工や、石油・天然ガスの精製分離、輸送、卸売り等の幅広い事業を行っている事が多いです。

鉱業の流れ

鉱業とは、鉱物資源を採掘し、またそれを精錬する事業のことをさします。
鉱物資源の採掘までの流れは以下のようになります。

鉱業は単に採掘するのではなく、入念な調査や権益の取得、採算性の確保など様々な工程を踏まえて、ビジネスとして成り立つことを確認したのち採掘します。

業界の詳細や職種など鉱業業界についてより詳しい内容を「製造業の最上流工程 ものづくりを支える鉱業業界を解説!」で解説しているので詳しく知りたい方はご覧ください。

鉄鋼業界とは

鉄鋼業界は、鉄鉱石や石炭、鉄スクラップなどの原料から工業炉を用いて加熱、溶解させて不純物を取り除くことで粗鋼(様々な形の鋼材となる鋼)を作り出し、鋳造や圧延等によって板やパイプ等の鋼材に加工し、自動車や産業機械、建築資材などあらゆる産業に提供しています。

鉄鋼業界には、鉄鉱石や石炭などを原料として鉄鋼を作る高炉メーカー、鉄スクラップから鉄鋼を作る電炉メーカー、添加物で強度を上げた特殊鋼を作る特殊鋼メーカーがあります。

高炉メーカー

原料から製鉄し、鉄鋼製品になるまでを一貫生産しているのが高炉メーカーです。高炉メーカーは巨大な装置や設備を用いて大量生産を行うため、企業規模が大きい傾向にあります。日本の高炉メーカーは日本製鉄とJFEスチールと神戸製鋼所の三社のみであり、国内粗鋼の3/4が高炉から作られています。

高炉メーカーの製鋼には石油やガスなどを熱源として材料を溶かす「高炉」と「転炉」を用います。

製鋼の手順は、まず鉄鉱石とコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)を高炉に投入します。次に熱風を吹き込むことで、コークスが熱風や酸素と反応し、一酸化炭素や水素などの還元ガスを発生させます。このガスが鉄鉱石を溶かしながら酸素を取り除き、銑鉄(炭素を多く含み、硬くて脆い製鋼前の材料)を作ります。

この銑鉄と少量の鉄スクラップ(くず鉄)を転炉に投入し、大きな圧力をかけて高純度の酸素を吹き込むことで、銑鉄中の炭素やケイ素、リンなどと酸化反応を起こし、高熱を発生させて燃焼します。この反応によって炭素が除去され、ケイ素やリンが取り除かれた後、不純物の少ない粗鋼となります。

電気炉メーカー

鉄スクラップなどを電気炉(電炉)で溶かして、鉄鋼製品を製造します。一貫生産の高炉メーカーに比べると一つの炉で生産できる量は少ないが、生産量の調整が行いやすいという特徴があります。また、CO2の排出量が少ないことや鉄スクラップのリサイクル的な側面があり、供給量に限りはありますが、環境には優しいです。

製鋼には電気エネルギーを熱源として材料を溶かす「電気炉(電炉)」を用います。

製鋼の手順は、電炉に鉄スクラップを投入して酸素を吹き込みこむことで、炉の上部から吊り下げた黒鉛の太い電極と鉄スクラップとの間で大電流のアーク放電を発生し、高温のアーク熱によりスクラップを溶解・精錬し、粗鋼を作ります。

特殊鋼メーカー

特殊鋼メーカーは、自動車部品、工具鋼、構造物など用途に合わせた鋼種を高度な合金設計のもとに製造して、様々な産業に供給しています。特殊鋼メーカーも電気炉を用いるが、電気炉メーカーとは別に分類されます。

製鋼の手順は、電炉メーカーと同様にして原料である鉄スクラップを電炉で溶解して不純物を取り除き、そこにマンガンやニッケル、クロムなどの添加物を加えることで、特殊な機能を持たせた鋼材を製造します。

特殊鋼は用途に合わせて製造されるため様々な種類の鋼があります。数ある特殊鋼のうち主要なものを一部紹介します。

鉄鋼業界についてより詳しい内容を「高い製鋼技術を持つ日本の鉄鋼業界について就活生向けにわかりやすくご説明します!」で解説しているので詳しく知りたい方はご覧ください。

非鉄金属業界とは

非鉄金属業界とは鉄以外の金属を取り扱う業界で、鉱石や不要となった家電等の金属(スクラップ)を取得し、アルミ、ニッケル、金などの非鉄金属に製錬した後、電材や機能材料等に加工し、各種メーカーに供給しています。
非鉄金属の取得は、非鉄金属の原料となる鉱石の採掘や、スクラップのリサイクルなどによって資源開発を行います。鉱石は国内では殆ど採掘されないため、海外企業からの輸入で非鉄金属の原料を確保しています。

鉄鋼が建材(構造材)や工具、機械部品等に使われるのに対し、非鉄金属は基本的に鉄鋼より高価なため、導電性や熱伝導性、耐熱性、耐食性、強度、重量などにおける鉄鋼より優れた特性が必要となる用途(電材、化学触媒、車体など)に使われます。

非鉄金属の製錬

多くの場合、金属は様々な元素を含む化合物の状態で鉱石として存在し、酸素や硫黄との分離が必要となります。この分離する手法として鉱石から金属を抽出する製錬があります。

製錬では鉱石に対し、熱・電気・化学的な方法で目的とする金属を抽出します。
具体的には、鉱石を溶かす溶解、目的の金属を得る方法や鉱石を硫酸などの電解液で溶解し、その溶液中で電気分解して析出させる方法などがあり、製錬所にて工業炉等の設備を用いて行います。

下記のように、それぞれの金属・鉱石ごとに異なる製法で製造します。

非鉄金属の加工

鉱石、スクラップを製錬し、金属を製造した後、工業炉や鋳造設備、圧延機、管製造設備などの様々な設備を用いて、圧延、押出、鋳鍛造等の加工をして、板、管、棒、線状の材料及び様々な部品に加工します。

非鉄金属の中でもベースメタルであるアルミ、銅、亜鉛などは需要及び生産量が高く、非鉄金属の中でも代表的な金属になります。
アルミは軽量性から航空機や自動車等の部品に、銅は導電性から電線や銅線、半導体等の電子材料に、亜鉛は耐食性から防錆や防食用として自動車、船舶、橋梁の構造材などに加工されます。

これらのベースメタルよりも優れた性能・性質が要求される場面でレアメタル、貴金属が使われます。特に半導体などの電子材料においては、様々な電気特性、磁性、発光・受光特性を持つ材料が必要となり、レアメタル、貴金属が使用される場面が多いです。

非鉄金属業界では、単に非鉄金属に製錬して、板・管材などの金属素材として販売するだけでなく、比較的加工が容易な製品である銅線、電線、ワイヤーハーネス、電池、その他電子材料等に加工している企業もあります。
特に、日本は自動車用ワイヤーハーネスや電線などに高いシェアを持ち、世界に供給しています。


非鉄金属業界についてより詳しい内容を「電子機器や機械に欠かせない非鉄金属業界について理系学生向けに解説します!」で解説しているので詳しく知りたい方はご覧ください。

石油・天然ガス業界とは

石油・天然ガス業界とは化石燃料である石油・天然ガス及び石油誘導品、基礎化学品を取り扱う業界です。

石油・天然ガス業界の事業は大きく上流・中流・下流に分けることができます。
上流は油田の探査や採掘を行う資源開発、中流は原油や天然ガスから不純物を取り除く精製分離、下流は石油・石油誘導品、天然ガスを供給販売する卸売りを行います。

これらの三つの工程のうち、どの領域を行っているかは企業によって異なり、石油開発の専業や石油卸売を専業している企業などがあります。

資源開発

石油・天然ガスの資源開発の流れはどちらも共通しており、まず、石油・天然ガスの産出する油田・ガス田の賦存する地域を探します。次に、その地域の権益を取得し、品位や埋蔵量の調査をします。
その後、採算性を検討して開発計画を策定したのち、掘削及び処理・運搬等の稼働に必要な諸施設を建設します。これらの設備が正しく稼働することで安定して資源を採掘しています。

化石燃料の自給率は1%未満であり、消費量の多くを海外から輸入しています。そのため、石油・天然ガスを開発する企業も基本的に中東をはじめとする海外の油田・ガス田を開発し、日本へ輸送します。

精製分離

石油と天然ガスは資源開発の流れは共通していますが以降の流れが大きく異なります。精製分離を含め、それぞれの事業や流通について詳しく説明します。

天然ガスの流通

天然ガスの流通を以下の図にまとめました。

高圧セパレーター、除去装置、冷凍装置等を用いて精製分離を行い、天然ガスの純度を高めつつ液化して、LNG(液化天然ガス)にして輸送します。これらの精製分離を天然ガスは採掘拠点で行ってから輸送します。

石油の流通

石油の流通を以下の図にまとめました。

石油(原油)は採掘したのち、国内の沿岸部にある石油化学コンビナートと呼ばれる工場群に輸送され、精製分離されます。
石油(原油)は天然ガスと比較して、精製分離時に様々な副産物(アスファルト・基礎化学品・石油誘導品等)を生成することができます。そのため、国内の沿岸部に石油関連企業が相互の生産性向上のために石油化学コンビナートと呼ばれる工場群・工業地帯を築き、効率的に産業活動を行っています。

具体的には、石油精製プラント、ナフサ分解工場、石油化学誘導品工場、火力発電所、ガス工場、その他関連工場が集まっています。

石油精製プラントで蒸留により各成分に分離され、LPガス、ガソリンなどは用途に合わせて、需要家のもとへ届けられます。
分離成分のうちのナフサと呼ばれる炭化水素混合物は同コンビナート内にあるナフサ分解工場へ送られ、化学製品の原料となるエチレン、プロピレン等の様々な構造をとる炭化水素系の基礎化学品に分離されます。これらの基礎化学品は石油誘導品工場に送られ、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム等の化学製品に加工されます。

このように、石油(原油)はエネルギー燃料としての用途だけでなく、化学製品の原料としての側面も持ちます。後者の石油を基に展開する化学産業は石油化学または石油化学工業と呼ばれています。
これらの石油化学の更に下流にはプラスチック加工業や繊維工業、ゴム工業などが続き、完成品としては自動車や電気機器、建材、衣類、日用品などの幅広い製品に使われています。

卸売り

石油業界の下流に位置する石油・天然ガスの卸売りについて詳しく説明します。
ENEOSなどの大手石油元売り会社は石油の精製分離から石油製品の卸売りまで行っています。自動車向けの販売ではガソリンスタンドを設けて、レギュラーガソリン・ハイオクガソリン・軽油の販売をしています。

家庭用や事業用に使われるガス燃料には都市ガスとLPガスがあり、東京ガスなどのガス事業者が供給・販売を行います。
都市ガス(LNG)はガス事業者の持つパイプライン網を通じて供給されます。
LPガスはガスが充填されたガスボンベを各需要場所に設置することで供給されます。

石油・天然ガス業界についてより詳しい内容を「エネルギーから素材まで手掛けている石油・天然ガス業界を詳しく解説」で解説しているので詳しく知りたい方はご覧ください。

資源業界のおすすめのポイント

資源業界に共通するおすすめのポイントを紹介します。

設備産業であるため企業規模が大きい

資源業界は鉱業、鉄鋼、非鉄金属、石油・天然ガス業界のいずれも資源採掘や精錬、加工、精製分離などの工程で巨大な設備が沢山必要となるため、設備投資額及びランニングコストが嵩みます。

そのため、大量の資源を同時に取り扱い、効率的に生産し、多くの顧客に大量販売することで操業しています。したがって、企業規模や従業員数も必然的に多くなり、業界の中堅企業でも他業界と比較して企業規模や売上高も大きくなる傾向にあります。

企業規模が大きいことは大企業に就職したい方や安定性を求める方にとっては非常に魅力に感じると思います。

多方面に資源供給を行うため社会貢献度が高い

資源業界は鉱物資源を採掘、加工して様々な産業に供給しています。鉱石を扱わない産業においても、設備を稼働させるために化石燃料の恩恵を間接的に受けています。
そのため、日本の産業活動を行う上で最も必要不可欠な業界だといえます。

資源業界は資源の供給を通してさまざまな産業に関わり、支えることができるため、社会貢献性や、やりがいを実感できると思います。

まとめ

本記事では資源業界の概要から、資源業界に属する鉱業業界、鉄鋼業界、非鉄金属業界、石油・天然ガス業界についてそれぞれ説明しました。
資源業界は鉱物資源の採掘、加工、供給を行っており、ものづくりの最も上流であるため、他の業界にはない特徴や魅力があります。

本記事で資源業界に興味を持った方は是非、業界研究や企業研究をしてみてください。
また、それぞれの業界に焦点を当てた記事を本文中でご紹介しましたので、興味を持った方はぜひご覧ください。

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