日本の中小企業が世界トップシェア?国内外で高シェアを誇る船舶部品業界をご紹介
移動手段として使われることが少なくなった船舶ですが、効率性と輸送量が優れていることから、未だに世界の物流の90%で使用されています。
船舶業界は物流業界と関係性が高いため、中長期的にみると世界経済の拡大と物流量の増加に伴い、拡大する傾向にあると言われています。
今回はそんな船舶業界の中でも、世界で高いシェアを占めている船舶部品業界についてご紹介します。
船舶部品業界とは
船舶部品とは、エンジン、ポンプ、航海計器などの船舶機器や、その部品であるプロペラやバルブなどといった、船舶に備わっている機器や部品のことを指します。
船舶部品業界では、これらの船舶部品を製造し、船の製造をする造船会社へ販売をしています。
船舶部品メーカーの技術系の職種としては、数年後の新製品に繋がるような技術の研究をする研究・開発職、製品の設計をする設計職、実際に工場で製品を作る製造職、工場で作られる製品の品質や効率を管理する品質管理・生産管理職などがあります。
ここからは船舶部品業界の概要として、業界の現状と、取り扱っている製品についてご説明します。
船舶部品業界の現状
船舶は大小含めて200種類以上と非常に多くの船舶機器で構成されているため、船舶部品業界はとても大きな市場を有しています。
その中でも、日本の船舶部品メーカーは国内建造船の機器の9割以上を供給するという高いシェアを誇り、国外に対しても航海機器、ポンプ、プロペラなど一部の製品でトップシェアとなっています。
船舶の修繕の際にも船舶部品は買われますが、船舶を新たに製造する造船が、船舶部品の主要な需要となっています。
そのため、船舶部品業界は造船業界の動向の影響を大きく受けます。
世界の新造船建造量の推移を表(参照:国土交通白書 2022 資料編)に示します。
造船業界において日本は、中国、韓国に次いでトップ3の世界シェアとなっています。経済の拡大に伴い規模の拡大を続けていた世界の造船市場ですが、リーマンショック(2008年)をきっかけに受注量が激減しています。船舶は受注から竣工までに2~3年かかるため、リーマンショックによる造船量への影響は2011年から出ています。
リーマンショックから約3年の間に製造された船舶によって過剰供給が起こってしまい、2011年以降右肩下がりの減少傾向となっています。
リーマンショックをきっかけとした減少は落ち着いてきたものの、新型コロナウイルスの影響を受け、今後も減少傾向が見込まれています。
こうした造船業界の影響を船舶業界も大きく受けることが見込まれますが、冒頭にお伝えした通り、船舶部品業界は市場の規模が大きく、日本メーカーは国内や、海外の一部製品で高いシェアを誇っています。
船舶部品業界を志望する際には、企業の業績や、主力商品の国内・国外のシェアなど、定量的に分析をして企業選びをするようにしましょう。
船舶を構成する機器の一覧
ここでは、船舶を構成する機器の一覧を図と表(参照:国土交通省 中国運輸局)に示し、主要な機器について簡単にご説明します。
【図. 船舶を構成する機器】
【表. 船舶を構成する機器の一覧】
主機関
船舶を推進させるためのエンジンのことで、主機関がプロペラを回転させることで船舶は進みます。
プロペラを回転させるエネルギーの生み出し方によって主機関の種類があり、大きく分けて3種類の主機関があります。
ディーゼル機関は軽油や重油を燃料とする機関で、シリンダ内で圧縮空気と燃料を爆発させ、その爆発力でピストンを動かし、動力を生み出します。
蒸気タービン機関は、ボイラーで蒸発させた蒸気によってタービンを回転させて動力を生み出し、電機推進機関はモーターでプロペラ軸を回転させます。
燃費の観点からディーゼル機関が使われることが多いですが、近年の環境への負荷の観点や、振動、騒音の少なさから電機推進機関が使われることも増えています。
また、発電のためにもディーゼル機関などが使われることもありますが、エンジンが主機関と呼ばれるのに対し、それらは補機関と呼ばれます。
操舵機
船の方向を変えたり、一定の方向に保つための機械です。
操舵輪を回した回転が、伝達装置を介して、舵と呼ばれる船の進行方向を変える板状の装置に伝えられます。舵の回転は追従装置によって検知され、所定の舵角に達した時に舵の回転が止まります。
このように舵の回転をフィードバックすることで、海の荒れ具合に関わらず所定の舵角になるよう制御をすることができます。
ボイラー
船内では、蒸気タービン機関の稼働以外に、燃料や潤滑油、シャワーで使用する水といった液体の加熱のために蒸気が使用されています。燃料は温めて粘度を低くすることで燃焼時に使用しやすい状態にし、また、潤滑油は温めることで、適切な粘度に調整をしたうえで使用します。
船舶の運航中は主機関の排気ガスの熱によって蒸気を発生させ、主機関の停止中にはボイラーを使って蒸気を発生させます。
航海機器
航海に必要な情報を得るための計測器具のことです。
速度計、風速計、距離測定器(レーダー)、位置測定器、コンパス、GPS、魚群探知機など、様々な計測器具によって安全な航海が実現されています。
船舶部品業界の特徴
世界に対して高いシェアを誇る
日本の船舶部品は品質の高さに定評があり、一部の船舶部品は高い世界シェアを取っています。
その中でも特にシェアが高く、プロペラ、航海機器、カーゴポンプで世界トップシェアとなっている企業があります。
船舶用プロペラでは、広島県のナカシマプロペラが世界トップシェアの44%。航海機器では、兵庫県の古野電機が世界トップシェアの44%、カーゴポンプという、原油などの液体貨物を吸い上げて陸揚げするポンプでは、広島県のシンコーが世界トップシェアの80%以上を占めています。
どの企業も社員数が数百〜数千人規模の中小企業であり、地方圏に本社を置く会社ですが、圧倒的なトップシェアを誇っています。
近しい業界の海運業界では歴史の長い大手企業がシェアを占めているのに対して、船舶部品業界では中小企業が優れた技術力を武器に高いシェアをとっていることが特徴です。
景気の影響を受けやすい
船舶部品業界や造船業界、海運業界は、好不況の波を受けやすいといわれています。
好景気の時は物流が活発化し、運航船の需要が高まります。供給量をすぐに増やすことはできないため、海運業界の運賃は高騰し、造船会社への船の発注量も増加します。しかし、船の完成には時間がかかり、早くても2〜3年先、発注が殺到したり、船が大型の場合にはもっと先になることもあります。
船が完成した頃には、船不足による運賃の高騰は落ち着いていることが多く、むしろ多くの船が完成するタイミングが重なれば、運賃は下落してしまいます。こうして業績不振に陥った場合、船の新造は行われず、やがて船が足りなくなってきます。
そして再び船不足により運賃が上がり、船を発注するということが繰り返されます。船の需要が高まったときと完成するときとのタイムラグに、様々な要因による世界経済の浮き沈みがからみ、海運業界は大きな好不況を繰り返します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
船舶部品業界では、国内メーカーの国内シェアが非常に高く、国外に対しても航海機器、ポンプ、バルブなど一部の製品でトップシェアとなっています。
世界に誇る技術力を持った企業で、その技術を学び発展させていくことに興味を持つ理系学生の方も多いのではないでしょうか。
ご紹介した企業以外にも、世界で高いシェアを誇る企業や製品がありますので、興味を持った方は、企業研究や説明会への参加、OB・OG訪問等をしてみてください。
また、船舶部品業界だけでなく、他の船舶業界にも興味を持った方は、「物流インフラに欠かせない「船舶業界」の技術職をご紹介します」にて、海運業、造船業、保守点検業について解説をしていますので、ご覧になってください。
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