高い製鋼技術を持つ日本の鉄鋼業界について就活生向けにわかりやすくご説明します!

2023年7月10日 更新

自動車や家電から工具、カトラリー、橋梁まで身の回りのありとあらゆるものに鉄(鉄鋼)が使われています。鉄(鉄鋼)は汎用性や安価であることなどから金属生産量の8割を占めており、需要の高さから業界規模が大きいです。

本記事では、日本の強みの一つでもあり、生産量が世界第三位と世界でも競争力を持つ鉄鋼業界について就活生向けに詳しく解説していきます。

鉄鋼業界の属する資源関連業界については「モノづくりの原点?様々な材料を社会に供給している資源業界とは」で解説しています。鉄鋼業界の他にも鉱業、非鉄金属、石油・天然ガスなど広く概要をご説明していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

鉄鋼業界とは

鉄鋼業界について鉄鋼の定義から丁寧にご説明します。

鉄鋼とは

鉄鋼とは、炭素を2%程度含む鉄の合金のことをさします。鉄に対し、炭素のみを加えた炭素鋼とニッケル・クロムなどを加えた特殊鋼の2種類が存在します。

一般的な鉄鋼は炭素鋼を指し、粗鋼や普通鋼とも呼ばれます。
特殊鋼は特殊な性質を持たせた鉄鋼であり、用途ごとに様々な種類があります。有名なものとしてはカトラリーなどに使われる、クロムを加えたステンレス鋼があります。

これらの不純物を加えた鉄鋼は純粋な鉄に比べ、強度や加工性に優れます。鉄鋼は強度や加工性の良さ、安価であることから、産業で最も使用されており、金属の中でも圧倒的生産量を誇ります。

鉄鋼業界とはどのような業界か

鉄鋼業界は、鉄鉱石や石炭、鉄スクラップなどの原料から工業炉を用いて加熱、溶解させて不純物を取り除くことで粗鋼(様々な形の鋼材となる鋼)を作り出し、鋳造や圧延等によって板やパイプ等の鋼材に加工し、自動車や産業機械、建築資材などあらゆる産業に提供しています。

鉄鋼業界には、鉄鉱石や石炭などを原料として鉄鋼を作る高炉メーカー、鉄スクラップから鉄鋼を作る電炉メーカー、添加物で強度を上げた特殊鋼を作る特殊鋼メーカーがあります。

高炉メーカー

原料から製鉄し、鉄鋼製品になるまでを一貫生産しているのが高炉メーカーです。高炉メーカーは巨大な装置や設備を用いて大量生産を行うため、企業規模が大きい傾向にあります。日本の高炉メーカーは日本製鉄とJFEスチールと神戸製鋼所の三社のみであり、国内粗鋼の3/4が高炉からつくられる高炉材です。

高炉メーカーの製鋼には石油やガスなどを熱源として材料を溶かす「高炉」と「転炉」を用います。

製鋼の手順は、まず鉄鉱石とコークス(石炭を蒸し焼きにしたもの)を高炉に投入します。次に熱風を吹き込むことで、コークスが熱風や酸素と反応し、一酸化炭素や水素などの還元ガスを発生させます。このガスが鉄鉱石を溶かしながら酸素を取り除き、銑鉄(炭素を多く含み、硬くて脆い製鋼前の材料)を作ります。

この銑鉄と少量の鉄スクラップ(くず鉄)を転炉に投入し、大きな圧力をかけて高純度の酸素を吹き込むことで、銑鉄中の炭素やケイ素、リンなどと酸化反応を起こし、高熱を発生させて燃焼します。この反応によって炭素が除去され、ケイ素やリンが取り除かれた後、不純物の少ない粗鋼となります。

電気炉メーカー

鉄スクラップなどを電気炉(電炉)で溶かして、鉄鋼製品を製造します。一貫生産の高炉メーカーに比べると一つの炉で生産できる量は少ないが、生産量の調整が行いやすいという特徴があります。また、CO2の排出量が少ないことや鉄スクラップのリサイクル的な側面があり、環境には優しいが供給量に限りがあります。

製鋼には電気エネルギーを熱源として材料を溶かす「電気炉(電炉)」を用います。
製鋼の手順は、電炉に鉄スクラップを投入して酸素を吹き込みこむことで、炉の上部から吊り下げた黒鉛の太い電極と鉄スクラップとの間で大電流のアーク放電を発生し、高温のアーク熱によりスクラップを溶解・精錬し、粗鋼を作ります。

特殊鋼メーカー

特殊鋼メーカーは、自動車部品、工具鋼、構造物など用途に合わせた鋼種を高度な合金設計のもとに製造して、様々な産業に供給しています。特殊鋼メーカーも電気炉を用いるが、電気炉メーカーとは別に分類されます。

製鋼の手順は、電炉メーカーと同様にして原料である鉄スクラップを電炉で溶解して不純物を取り除き、そこにマンガンやニッケル、クロムなどの添加物を加えることで、特殊な機能を持たせた鋼材を製造します。
特殊鋼は用途に合わせて製造されるため様々な種類の鋼があります。数ある特殊鋼のうち主要なものを一部紹介します。

鉄鋼業界の概況

ここでは鉄鋼業界の概況について解説します。

日本の鉄鋼業

原料に乏しい日本では、原料や製品の輸送に便利な臨海地域に製鉄所を建設し、高炉等の巨額の設備投資を実行して高い技術水準を達成、国際競争力を確立しました。現在でも日本は粗鋼生産量は世界第3位であり、日本を代表する業界の一つであるといえます。

また、鉄鋼は需要の高さから市場が大きく、輸出品目でも自動車、電子部品に続く3番目に位置しています。しかし、原料である鉄鉱石や石炭などの原料を海外から100%輸入しており、それらを加工して粗鋼、鋼材に加工したのちに国内及び海外へ供給しています。

日本の鉄鋼メーカーは粗鋼生産量のほか、高張力鋼(ハイテン)など高級鋼材に強みを持っています。ハイテンとは自動車の車体等に用いられ、合金成分の添加、組織の制御などを行い、構造用圧延鋼材よりも強度を向上させた鋼材です。

鉄鋼業界の課題・動向

鉄鋼業界の課題・動向についてその概要をご紹介します。

カーボンニュートラル

鉄鋼業の高炉メーカーでは製造過程で二酸化炭素が大量に発生するため、産業構造的に二酸化炭素排出量が多いです。製造業における二酸化炭素排出量の約4割を鉄鋼業が占めるため、鉄鋼業界は二酸化炭素排出量の削減が求められています。

鉄鋼メーカーは積極的に企業努力を積み重ねており、鉄鉱石からの酸素の除去によるコークス使用量の低減やコークスの代替材料に水素を使うなどの技術開発が進んでいます。

鉄鋼業界の再編

日本の粗鋼生産量は年間約1億トンで世界3位ですが、首位の中国はその約8倍の生産量を誇り、世界の粗鋼生産量の約半分を占めています。

そのため、鉄鋼業界は中国が莫大な影響力を有しており、2014年頃には過剰な生産能力を抱えた中国の鉄鋼メーカーが安価な鋼材を世界中に輸出したことで日本を含む世界各国の鉄鋼メーカーが大幅減益や赤字に追い込まれたことがあります。

これらの世界情勢や人口減少にともなう内需先細り等の懸念から、日本の鉄鋼業界は業界再編の動きが活発化しており、事業再編やM&A(合併・買収)などによる事業規模の拡大や生産設備の集約によるコスト削減に取り組んでいます。

そのほか、自動車業界でニーズが高まっている軽量で強度が高い超高張力鋼板(超ハイテン)の開発を日本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所が共同で行うなど、グローバル市場における競争力を高めようとしています。

鉄鋼業界の職種

鉄鋼メーカーは自社の設備を用いて鉄鋼製品を作り出すため、製造技術の開発、設備の維持管理等が主な業務内容となります。これらの職種を一部ご紹介します。

製造技術

製銑・製鋼・熱延等のプロセスにおいて、操業から得られる膨大なデータをもとに、荷重や微細なスケールの正確な加工、鉄鋼製品の形状制御、金属組織制御など、材料工学の専門知識を用いて、技術開発を行います。

これらの技術開発から鉄鋼製品の品質や性質をつくり込み、かつ低コスト、高効率で安定的な操業を目指します。

設備技術

鉄鋼製品の生産に必要な製造設備に関する技術開発や設計、立ち上げ、維持管理等を行います。製鉄所の設備には工業炉や鋳造設備、圧延機、鋼管製造設備等があり、それぞれのスケールが大きく、種類も豊富です。新設する際は都度、仕様から検討を実施します。

機械設備の設計には、機械、電気の知識を、立ち上げには土木・建築の知識を必要とします。また、製鉄所では工業炉等の設備に膨大なエネルギーを安定的に供給するために、発電所や水素・酸素プラントなどの操業もする必要があり、エネルギー分野の知識も必要とします。

研究開発

鉄鋼製品の開発、プロセス開発、基盤技術開発等を行う仕事です。自動車や家電向けの薄鋼板、建材・船舶向けの厚鋼板(鋼材)、電磁鋼板など鉄鋼製品をカテゴリーごとに分かれて研究開発します。

鉄鋼の性質は成分や金属組織、結晶構造などによって変化するため、金属学的原理の解明や成分設計を行い、試作や検査等を経て、製造プロセスの開発の後、量産されて市場に流通します。

鉄鋼業界のおすすめのポイント

鉄鋼業界のおすすめのポイントをご説明します。

幅広い専攻分野の学生が活躍できる

鉄鋼業界は一見、自身の専攻分野と直接的に結びつきをイメージしづらい理系学生が多いと思います。
しかし、鉄鋼業界は設備の立ち上げに必要な機械、電気、土木・建築の知識をはじめ、金属、添加物等や鋼材のサイズや強度などから、材料、物理、化学等の知識が必要となり、幅広い専攻分野の学生が活躍できる業界です。

国際競争力を持つ

鉄鋼業界は鉄鋼の汎用性の高さから自動車、船舶、産業機械等様々な用途があり、市場の大きな業界です。
その中でも、日本の粗鋼生産量は第三位であり、輸出品としても上位に位置しており、ハイテン鋼等高級鋼材などの強みを持つなど、グローバル市場における競争力を有しています。

また、鉄鋼メーカーは大きな設備を必要とし、大量生産を行う産業構造上の理由から、企業規模が大きい傾向にあることも特徴です。

まとめ

鉄鋼業界の概要からメーカーの種類や事業内容、職種、おすすめのポイントまでご説明しました。
鉄鋼業界は規模も大きく、国際競争力を持っていることもさることながら、理系の専攻分野も生かしやすく、理系学生にとって魅力の多い業界です。

本記事で鉄鋼業界に興味を持った方は是非、業界研究や企業研究をしてみてください。

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