製造する素材によってどう異なる? 素材メーカーを各業界ごとにご紹介
皆さんは素材メーカーというワードを聞いたことがあるでしょうか?
メーカー業界や製造業は理系の学生から人気の業界の1つですが、素材メーカーもそのなかに位置付けられており、文字通り素材を製造している企業のことを指します。
しかし、自動車メーカーなどと異なり、素材メーカーという単語を聞いて代表的な企業を思い浮かべたり、どのような事業を行っているかを想像がつかない方もいるのではないでしょうか。
というのも、素材メーカーは非常に範囲が広く、素材メーカーの中でも製造している製品によって6つの種類に分けることができます。
今回は素材メーカー企業の事業内容や、素材メーカーに含まれる6つの業界、さらに素材メーカー全体の近年の傾向や将来性などについてご紹介します。
素材メーカーとは
まずは素材メーカーについて、素材メーカーがどのような企業を指すかという明確な定義はありません。
しかし一般的には、原材料を開発・加工し、他産業や別の製造メーカーへ材料(素材)を供給する企業のことを素材メーカーと呼んでいます。
素材メーカーが製造、供給している製品は、一般消費者が使用するような製品ではなく、製品を製造するために必要になる素材です。
そのため素材メーカーは、別のメーカーや商社などと取引をするBtoBのビジネスモデルになります。
素材メーカーの種類
素材メーカーが取り扱う素材は、繊維やガラス、金属、紙など多岐にわたります。
今回は素材メーカーを製造する素材ごとに
– 化学業界
– 窯業業界(無機材質業界)
– 繊維業界
– パルプ・紙業界
– 鉄鋼業界
– 非鉄金属製品業界
の6つに分け、それぞれの業界ごとにどのような素材を製造しているかや素材の供給先であるメーカーの業界などをご紹介します。
化学業界
石油や天然ガスなどを主原料とし、化学反応を用いて製品を製造するのが化学業界のメーカーです。
化学業界の製品に関してはプラスチックやゴム、染料、化学肥料、合成繊維、電子部品、さらには医薬品や化粧品など非常に多くの分野が該当し、後にご紹介するガラスやセメントに関しても化学素材と捉えられる場合もあります。
化学業界を説明する際によく使用されるのが「化学メーカー」や「化学素材メーカー」というワードですが、化学業界において消費者にわたる最終製品を製造するメーカー以外は化学素材メーカーという位置付けになります。
化学メーカーは製造している製品や事業内容によって
– 総合化学メーカー
– 誘導品メーカー
– 電子材料メーカー
の3種類に分けられます。
総合化学メーカー
総合化学メーカーは原料の調達から最終製品の製造、販売までを一貫して行う企業です。
扱う製品は化学品から医薬品まで幅広く、企業規模が大きいのも特徴です。
総合化学メーカーは素材メーカーとしてだけでなく、食品用ラップなど、エンドユーザーへと届く製品の製造も行っているため、消費者の需要情報をもとに生産、流通を管理できるというメリットがあります。
誘導品メーカー
誘導品メーカーは、原料を調達し、別のメーカーの製造に用いられる中間材料を製造し、完成した中間材料を別のメーカーに販売する企業です。
誘導品メーカーは特定の分野に特化し、各社独自の技術を生かした製品や、付加価値のある製品を製造している企業が多いのが特徴として挙げられます。
電子材料メーカー
電子材料メーカーは、半導体をはじめとした電子部品を製造し、電子機器メーカーに部品を販売する企業で、中には総合化学メーカーのように自社でPCの部品であるCPUやGPUなどの最終製品を製造する企業もあります。
スマートフォンやPCという最終製品に近い製品を製造しているため、誘導品メーカーに比べて景気や流行りの影響を受けやすいという特徴があります。
窯業業界(無機材質業界)
窯業(ようぎょう)業界は無機材質業界や、窯業・土石製品製造業などと呼ばれることもありますが、取扱製品ごとに、ガラス製品製造業、セメント製品製造業、陶磁器製造業の3つに分類されます。
ここではそれぞれの分野の特徴をご紹介します。
ガラス製品製造業
ガラス製品製造業は、板ガラス製造業を中心とした、文字通りガラス素材を製造する分野で、製造されたガラス素材は主に建築業界や自動車業界へ供給されます。
板ガラス製造業では、業界売上高全体の約9割を上位5社が占めており、一方でガラスびん製造業や厨房用、理化学用製造業などは中小企業が多いのが特徴です。
ガラス業界全体で見ると、日本の人口減少に伴い、建築物や自動車の販売数が下落しているため、それに伴い国内市場は減少傾向にあります。
各企業は世界的な規模でのM&Aに力を入れているため、企業を調べる際には海外事業や今後の展望などをよく調べるようにしましょう。
セメント製品製造業
セメント製造には、大規模なプラントが必要となるため、大手企業のみが生産を行っているのが現状です。
セメントは大部分が建設用のコンクリート製品に加工され、出荷先の70%以上が国内向けであるため、建設業界や公共事業の動向に大きく左右される業界という特徴があります。
セメント業界の代表的な企業は、化学や機械等セメント以外にも事業を展開しています。
オリンピック以降、セメントに関しても、建設業界の影響を受けやすく、建設コストの上昇や人手不足などから需要は右肩下がりが続くと予想されてるため、各企業が今後セメント製造に対して、どのような方針を掲げているのかは注意して調べておきましょう。
陶磁器製造業
陶磁器の用途は、生活用品と産業用品(タイル等の建築用材、電気用品)に分けられます。
産業用品では、大手メーカーがサプライヤーとなっており、特に衛生陶器製造業では、TOHOとLINUXによる寡占化が進んでいますが、、生活用品では、家内工業的な中小零細企業が多いのが特徴です。
繊維業界
繊維業界は、綿や絹などの天然繊維や、ポリエステルやアクリル、ナイロンなどの化学繊維を製造する業界で、化学と繊維両方扱っているメーカーが多いため、上記でご紹介した化学メーカーに分類されることもあります。
繊維と聞くと、ファッションやアパレル業界への素材を供給しているイメージが強いかもしれませんがアパレル以外にも自動車や航空機の内装、住宅用の断熱材からスポーツ器具など様々な分野へ繊維素材を提供しており、近年ではマスクや医療用製品の需要も増加しています。
繊維業界の動向としては、製造品出荷額がピーク時の1/6まで減少しているなど、繊維業界は、縮小傾向にあります。
世界全体では繊維市場は今後も拡大すると予想されていますが、繊維産業における日本の輸出総額は、中国やドイツ、イタリアなど他の主要国とは開きがあるのが現状です。
国内の繊維産業は特殊な細い糸の開発など、先進的な技術・製品を有しており、日本の繊維製品は海外からも高く評価をされているため、海外市場への積極的な参入がより重要になってくると言えるでしょう。
パルプ・紙業界
パルプ・紙業界は印刷用紙のほか、段ボール、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなど紙製品の原材料となる素材を加工し、印刷会社や衛生用品会社、段ボールメーカーなどへ供給しています。
パルプ・紙業界の素材は紙(印刷・情報用紙や包装用紙、衛生用紙など)と板紙(段ボール原紙や紙器用板紙など)の2つに分けられます。
製紙業界全体としては、もともと人口減少や少子高齢化、近年では新型コロナウイルスの影響でペーパーレス化が加速したことなどの要因もあり、紙需要が縮小傾向にあるのが全体の傾向です。
しかし紙に関しては、近年環境意識の高まりから脱プラスチックの流れが加速したことにより、プラスチックに代わる素材として紙製ストローなど紙のパッケージが注目を集めています。
板紙についても、段ボール原紙の需要が、段ボールの用途の過半数が食料品向けであるため安定的な需要が見込めることに加え、EC市場拡大による通販用の押上げも要因となり、中長期的な視点では徐々に拡大傾向にあります。
このように、紙が再生可能な木材を原料としており、また使用後も古紙回収という形でリサイクルが可能である点などから環境面での相性が良く、植物由来のカーボンニュートラルセルロースナノファイバーなど、環境に優しい新素材の開発や、医療領域など新たな業界への進出に各企業は力を入れています。
鉄鋼業界
鉄鋼業界は文字通り鉄鋼を製造する企業で、供給先としては、鉄鋼メーカー系列のグループ会社や商社、あるいは自動車業界や建設業界、産業機械などのメーカーが挙げられます。
鉄鋼業界の企業は鉄鋼の製造方法によって以下2つ、あるいは3つに分類されます。
高炉メーカー
鉄鉱石や原料炭などの原料から高炉(溶解炉)で銑鉄を製造し、鉄鋼製品になるまでを一貫して生産する企業です。
高炉は巨大な装置や設備を必要とするため、高炉メーカーは企業規模が大きいという特徴があります。
電炉メーカー
くず鉄や鉄スクラップなどを電気炉で溶かすことで、不純物を取り除き、鋼を生産する企業です。
電炉メーカーによって製造された鋼材は普通鋼材として建築や土木、乗り物などの骨格部分に利用されます。
特殊鋼メーカー
くず鉄や鉄スクラップなどを電気炉で溶かして製造するという点では電炉メーカーと同じですが、そこにマンガンやニッケル、クロムなどのレアメタルを加ることで、硬さや耐摩性といった特殊な機能を持たせた鋼材を製造しているのが特殊鋼メーカーです。
特殊鋼メーカーによって製造された鋼材は高級鋼として、自動車や航空機のエンジンやパソコンなどの情報機器に使用されます。
業界全体としては、鉄鋼を製造するのに必要な鉄鉱石やコークスは全て輸入に頼っており、円安になれば原料のコストが上昇するリスクがあります。
インフラ整備が進んでいるアジアを成長マーケットとして海外事業に力を入れるため、海外での生産拠点設立や、国際的な提携なども進めているようですが、海外企業を含めた競争力は激しくなると考えられています。
そのため、価格以外に企業にどのような強みがあるのか、今後どのような形で利益を上げていくのかといった計画などを企業研究の際には調べるようにしましょう。
非鉄金属製品業界
鉄は非鉄金属に比べて総量が多いため、金属は上記でご紹介した鉄と、鉄以外の金属である非金属に分けられます。
鉄以外の金属は、主に金、銅、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、鉛、亜鉛などが代表的な金属として挙げられ、
ベースメタル:銅やアルミニウムといった産出量が多く、大量に消費される金属でである
レアメタル:リチウムやチタンなど埋蔵量自体が少ないことで希少性が高い金属のほか、量は豊富でも採掘や抽出が難しいことにより希少性の高い金属
プレシャスメタル:金、銀、白金など一般に貴金属
などに分類されます。
また、非鉄金属製品業界のビジネスモデルは化学業界と同じように、原材料の取得から部品となる製品が製造されるまで
– 採掘
– 製錬
– 加工
の3つの領域に分けられます。
各工程は言葉の通り、
採掘は原材料の鉱物資源を採掘や家電などから金属のリサイクルを行い、
製錬では、採掘した鉱物資源を中間材である地金という金属に製錬する作業やさらに純度の高いものにする精錬作業の実施、
そして地金を加工し、自動車部品や電子部品などを製造する加工
となっており、企業ごとに、1工程のみの担当や、3工程全てを担当している場合があります。
電化製品などには非鉄金属を多く含む電子部品が多く使われており、技術革新などの背景も含め、今後も一定の需要は期待できることから、非金属業界は市場規模は緩やかに成長を続けると考えられています。
まとめ
今回は素材メーカーについて、製造している素材ごとに各業界の事業内容や将来性などをご紹介しました。
業界ごとにそれぞれの特徴があることはお分かりいただけたかと思いますが、素材メーカー共通のポイントとなるのが海外進出に力を入れている点です。
今後日本の人口は減少し続けると考えられており、国内市場が縮小するのは避けられない状況ですが、世界全体ではアジアを中心に成長を続けると考えられてる業界が多くあります。
このような中で、現在多くの企業が海外進出に力を入れていますが、海外市場では海外の企業との価格競争が課題となります。
日本の素材メーカーは世界から高く評価されているケースも多く、今後は品質や独自性の部分がより重要になる可能性もあるため、各企業がどのような分野の研究、開発を進めているのかを調べるようにしましょう。
また、企業の売上の国内、海外の割合も重要な指標です。
例として、現状企業の業績、成長率が安定していても売上の多くが国内の場合は、将来的にも同じ成長率が続くか疑問が残ります。
素材メーカーは、社会の変化の影響を受けやすいため、企業研究を進める際は、より将来性の部分を重点的に調べるようにしましょう。
素材メーカーに分類される企業は、BtoBのビジネスモデルや最終製品を製造していないという点から馴染みのない企業が多いかもしれません。
しかし、どの製品の製造においても、部品、素材は不可欠であり、製造した素材が建設業界や自動車業界、アパレル業界など様々な業界の製品に利用されように、多くの業界と関わりを持てることは素材メーカーに共通するやりがいの1つと言えます。
今回の記事で素材メーカーに興味を持った方はぜひ、各素材の業界についてもさらに調べ、興味のある業界や企業を見つけていきましょう。
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