機械を作る機械とは?社会を支える工作機械メーカーを理系学生向けに紹介します!
私たちの生活は、スマートフォンやパソコンといったデバイスから自動車や飛行機といった乗り物まで機械であふれています。日常生活だけでなく、あらゆる産業においても機械は必要不可欠です。
そして、これらの機械産業を支えているのが工作機械です。
今回はこの工作機械に焦点を当てて、理系学生向けに分かりやすく解説します。
工作機械とはどのようなものか
まずは工作機械とはどのようなものなのか、その概要や種類について詳しく解説します。
工作機械とは
工作機械とは、金属などの材料を除去加工(削る、溶かすなど)して、所定の寸法・形状に加工する機械です。
あらゆる機械部品を作るために使用されていて、私たちの身の回りの例を挙げると、自動車、飛行機等の部品や、スマートフォン、パソコンに必要不可欠な半導体を加工しています。
これらのことから、工作機械は「機械をつくる機械」という意味でマザーマシンとも呼ばれます。
代表的な工作機械の種類
工作機械は基本的に穴あけ、切削、研磨などを行い目的の形に加工します。
刃物やドリル、砥石等の物理的なものから、レーザーや電気などを利用した特殊なものまで様々な工作機械があります。
また、仕様には、手動か自動か、単一機能か複合機能か、素材自体を回転させるか工具を回転させるのか、など様々な違いがあります。
数ある中でも、活躍の場面が多い代表的な工作機械を表にまとめました。
表の補足説明を以下に述べます。
【①~⑥】
「〜盤」という名前の工作機器を6種類紹介していますが、旋盤は材料を回転させ、その他の盤は工具を回転させるという違いがあります。
【⑦、⑧】
NC工作機械というものがあり、このNCは「Numerically Control」の略で数値制御を意味します。この数値制御によって、作業員が直接操作していた加工を自動化できるようになりました。
NC工作機械の代表的なものとしては、マシニングセンタとターニングセンタがあります。
マシニングセンタはフライス盤から派生したもので、多種類の工具を自動で交換しながら回転させて加工します。
ターニングセンタは旋盤から派生したもので、材料を回転させる機能と工具を自動で交換しながら回転させる機能を併せ持ちます。
【⑨、⑩】
放電加工機やレーザー加工機では、物理的に難しいような、複雑で繊細な加工が行えます。
【⑪】
金属3Dプリンターは近年、技術開発が進んでいて、加工精度や価格面でも導入可能なレベルに達してきており、導入する企業が増えてきています。
このように工作機械は様々な種類や方式がありますが、どのような形であっても、金属などの材料を加工するという機能を持った機械であることには変わりありません。
工作機械メーカーとは?
工作機械の詳細から種類まで説明しました。
ここでは、工作機械を作っている工作機械メーカーのビジネスモデルと職種をご紹介します。
工作機械メーカーのビジネスモデル
工作機械メーカーのビジネスモデルを以下の図に示しました。
顧客から受注した要件を基に設計し、商社・材料メーカー等から仕入れた材料・部品を加工して組み立てることで工作機械を作り、顧客の工場に納入するという流れになります。
工作機械は、顧客の製造する製品や製法、工場の環境などに合わせたものを作るので、基本的にオーダーメイド品になります。
また、工作機械は非常に高価であり、10年〜20年程の長期間を利用するため、機械の点検や修理なども必要になります。
そのため、サービスエンジニアが顧客の工場に赴き、修理・メンテナンスをすることでアフターサービス料としても利益を得ています。
主要な顧客はあらゆる業界の生産工場で、具体例としてはスマートフォン、家電、パソコン、自動車、飛行機等の機械、またそれらの製造装置、部品メーカーなどが挙げられます。
工作機械メーカーの職種紹介
ここでは、工作機械メーカーの主な職種をご紹介します。
技術開発
工作機械の主要な構成要素の技術開発が主な業務です。
光、振動、熱などの物理現象の研究による加工技術の向上や機械内部の機械設計、電気設計の技術開発も行います。
また、近年工作機械の自動化がトレンドであり、多くの企業が制御ソフトウェア開発に力を入れています。
機械設計
顧客の要望を満たせるように工作機械の構造を設計します。
要望に応じて工作機械の種類・方式、大きさ等が異なり、構造も大幅に変わってきます。
プロジェクトの前工程に相当するため、製造までの流れや納期を考慮しつつ、最適な設計を行うことが求められます。
電気設計
機械設計が設計した構造を電気的に制御するための設計をします。
工作機械は微細な加工を行うため、高い精度や緻密な動作が求められます。
特にNC工作機械は様々な加工を自動で切り替えるため、より複雑な制御が必要になります。
また、工作機械は製造工場で24時間運転しつづけるため消費電力が多いため、電気設計において最適な設計やより消費電力を少なくする工夫が求められています。
生産技術
設計した図面を実現するためのプロセスを考え、設備の立ち上げを行います。
また、自社工場の既存の設備の改善・管理等を行い、工作機械の生産工程を支えます。これらの設備の改善は設計や製造の意見を基に行うため、他部署との連携が必要不可欠になります。
近年は生産設備も自動化傾向にあり、ソフトウェア面での改善も重要になっています。
製造
製造設備を用いて工作機械を構成する部品の加工や組み立て、検査等を行います。製品の品質向上や製造を効率的に行うことで納期短縮を目指します。
製造現場の視点での意見を生産管理や設計にフィードバックすることも重要な役割です。
サービスエンジニア
長期間使われる工作機械において製品の修理やメンテナンス等のアフターサービスは非常に重要です。
顧客は、製品の質や価格だけでなく、アフターサービスの充実さも重視する傾向にあります。
製造現場において工作機械のトラブルは顧客に大きな損失を与えることになるので、修理やパーツ供給などによる迅速な問題解決が必要になります。
営業
取引先である製造業に工作機械を販売します。
最初の商談から見積書の作成、納入まで顧客に寄り添う役割です。顧客のニーズをヒアリングし、製品の販促を行うため、コミュニケーションスキルや工作機械への知見などが求められます。
購買・調達
プロジェクトの進行に伴い、工作機械を製造するために必要となる材料を国内外の取引先に発注します。
必要な材料やその取引先は多岐にわたるため、工作機械や材料への知見はもとより、取引先の生産能力や財務状況を考慮することも必要になります。
工作機械業界の展望
工作機械業界において注目されている3つの技術に焦点を当ててこれからの展望をご紹介します。
自動化
工作機械は、レバーによる回転数の設定、工具の取付け、手動でハンドルを回して材料と工具の位置を調整しながらの加工等、人による作業が欠かせません。
NC工作機械によって、コンピュータ制御で自動加工が可能になり、作業員の練度による加工のムラも殆ど無くなりました。
しかし、回転数や位置の設定、動作のプログラミング、材料の取付け、取り外し等、加工前後の工程には人による作業が依然として必要です。
工作機械の自動化ではこれらの加工前後の作業をさらに自動化します。近年、この工作機械の自動化のニーズが高まっていて、工作機械メーカーも自動化を実現するためのソフトウェア等の開発を盛んに行っています。
これらのニーズは、少子高齢化、人件費の高騰などの影響から人手不足や人件費を減らしたいという動きによるものです。
電気自動車
日本の主要産業である自動車業界は、工作機械市場の約30%のシェアを占めています。
高いシェアを誇る自動車業界が電気自動車へ移り変わることに伴い、モーターをはじめとして自動車を構成する様々な部品の仕様が大幅に変わります。
この電気自動車化による新たな設備投資によって加工機械のニーズが高まってきています。
5G
近年、部品の複雑化により3Dデータも大容量化したため、工作機械に高性能なデータ処理機能を搭載する必要があり、機械側での作業者による操作は必須となっていました。
しかし、クラウド上でデータを処理しながら、そのデータを5Gでリアルタイムに工作機械へと伝送することで、遠隔から工作機械を自動運転させることが可能になりました。
この5G通信に対応した次世代工作機械の開発が進んでおり、工作機械業界において5Gの活用が重視されています。
工作機械業界の理系学生におすすめポイント
工作機械業界が理系学生にとっておすすめである3つのポイントをご説明します。
一般認知の低い優良企業が多い
工作機械業界はBtoBビジネスであり、実習等で工作機械を取り扱ったことがある学生以外には認知される機会が少ないため、比較的競争率が低いです。
そのため、大手企業や優良企業に就職できる可能性が高く、理系学生におすすめの業界です。
また、新卒採用に関して、技術職募集では理系学生が有利になりやすい傾向があります。その中でも機械、電気、情報系学生は不足気味であるため歓迎されやすいです。
将来性の高い業界
身の回りに機械のありふれる現代において、マザーマシンである工作機械には設備投資による波はあれど、安定した需要が存在します。
この需要は、電気自動車、5G、自動化などの新技術の台頭に従って更に高まります。
また、工作機械の納入だけでなく、設備のメンテナンスや生産工程のソリューション提案などによって収益を得る仕組みもあります。
これらのことから、現状もさることながら将来性が高い業界です。
社会貢献度が高い
工作機械は自動車、電機、航空、鉄道、など様々な業界の製造工場で使われていて、産業を根底から支えています。
また、近年、工作機械メーカーは国内にとどまらず海外展開を積極的に行っています。これは、途上国や新興国の発展に伴って海外からのニーズが生じているためです。工作機械業界は消費者の目に映らないながらも、世界中のあらゆる産業を支えており、社会貢献度の高い業界であるといえます。
まとめ
工作機械業界に焦点を当てて、工作機械の概要や種類、メーカーのビジネスモデルや職種、これからの展望までご紹介しました。
工作機械業界に皆さんが直接かかわる機会はあまりないと思いますが、裏から社会を支えている工作機械の存在は無くてはならないものです。
この記事を読んで工作機械メーカーに興味を持った方は是非、説明会に参加やOB・OG訪問等をしてみてください。
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