手に職をつけられる需要の高い職種 「電気設計職」をご紹介します

2024年3月12日 更新

みなさんは「電気設計職」という職種をご存知でしょうか?
メーカーで機械を作る際、工場で製造をする前段階として、機械設計や電気設計といった設計を行うことが必要不可欠となります。

今回は電気設計職について、実際の仕事内容から機械設計職との関わり方、電気設計職のおすすめポイントについてご紹介します。

電気設計職とは

電気設計職は、機械を動作・制御するために、電気回路を設計したり、配線を設計したりする職種です。

電気設計職が設計をする機械は必要とされる電圧の大きさによって重電と弱電に別れており、重電にはベルトコンベアなどの産業用機械やエレベーター、ビルの変圧器など大型の機械が多く、弱電には電話やテレビ、洗濯機など家庭用のさほど大きくない機械が多いです。

電気設計職の仕事内容

ここからは重電であるエレベーターの電気設計を例に挙げて、電気設計職の仕事内容をご説明します。

重電の設計の手順を大まかに説明すると以下のようになります。

・電気部品の選定

・回路設計

・配線の設計

・PLCのソフト設計

それぞれについて順に説明していきます。

電気部品の選定

電気部品の選定は、特定のシステムやデバイスが期待通りに機能するために必要な各種部品を決定する重要なプロセスです。
このプロセスでは、要件、性能、予算、及び規制への準拠を考慮し、各部品の仕様、信頼性、寿命、コスト、供給状況などを検討して最適な部品を選定します。

エレベーターの電気部品の選定を例に挙げると、主な部品にはモーター、PLCなどの制御装置、センサー、リレー、ブレーカー、変速器、スイッチ、及び表示装置が含まれます。
モータの選定では、エレベーターの容量、昇降速度、効率、静粛性などを考慮します。
制御装置の選定では、その制御能力、信頼性、保守性、互換性、プログラミングの容易性などが評価されます。

これらの部品の選定においては、部品が相互に適切に連携し、全体としてエレベーターシステムが安全で効率的に動作することが求められます。

回路設計

回路設計では、要件を満たすために必要な電気部品の配置と接続方法を決定します。

この業務は大別して、機械や設備の動力部(モーターやヒーター等)に電源を供給して稼働させる「動力回路」と、制御盤や設備の押しボタンやスイッチ、センサーなどの入力信号を受け取り、意図したタイミングで動力回路を操作する「制御回路」の設計に分けられます。

例として、エレベーターの設計を考えると、モーター制御、センサーの読み取り、ユーザーインターフェースなど、エレベーターシステムの各部分を制御するための複数の回路が必要になります。

動力回路はモーターを駆動し、エレベーターの昇降を実現します。制御回路は、制御装置からの指令を適切にモータ制御回路に伝達し、またセンサーからの入力を受け取り、それを制御装置に送信します。
回路設計の過程では、システム全体の安全性、効率性、信頼性などを確保することが重要となります。

配線の設計

配線の設計は、回路図に基づいて適切なケーブルや配線ルートを決定し、信号や電力の伝達を効果的に行うための計画を立てる作業です。

エレベーターの設計を例に挙げると、配線の設計では以下の項目が考慮されます。

まず、電力供給に使用するケーブルが選ばれます。また、配線の設計では遮蔽やノイズ対策も考慮され、シールドケーブルの使用やノイズフィルターの適切な配置などによって信号品質を確保します。
次に、配線ルートが計画されます。エレベーター内でのケーブルのルートを配線トレイや配線ダクトを使用して整理し、信号や電力線の交差や干渉を最小限に抑えます。

配線の設計により、エレベーターシステム内での信号伝達や電力供給が効率的かつ信頼性高く行われるようになります。

PLCのソフト設計

PLCソフト設計は、機械の動作を制御するプログラムを作成する作業です。

この作業の目的は、各部品が期待する動作を適切なタイミングで実行するようにすることです。
入力デバイス(センサーやスイッチなど)からの信号を解釈し、それに応じて出力デバイス(モーターやライトなど)を制御するためのプログラムを開発します。

エレベーターの場合、PLCソフトウェアは、各フロアの呼び出しボタン、車内の階数選択ボタン、各フロアとエレベーター車両の位置を検出するセンサーなど、多数の入力デバイスからの信号を受け取ります。
そして、それらの信号に基づいてエレベーターのモーターを制御し、エレベーターの昇降と停止を行います。

ソフトウェア設計の過程では、システム全体の動作要件を満たすためのロジックを精巧に設計する必要があります。
また、エラー処理や異常検出機能を含め、システムの安全性と信頼性を確保することが重要です。

重電と弱電の設計工程の違い

ここまで、重電であるエレベーターを例に挙げて、電気設計の流れについてご説明しました。
弱電においても、部品を選定し、回路を設計し、制御ソフトを設計するという大まかな設計工程は同じです。

大きく異なる点として、PLCで制御を行なう重電に対して、弱電ではマイコン(マイクロコンピュータ)と呼ばれる電子部品で制御を行います。
また、弱電は重電に比べて電磁ノイズの影響を受けやすいため、回路をシールドで覆ったり、フィルタによって電磁ノイズを除去するなどの対応がより重要となります。

機械設計との関わり方

電気設計では回路や制御システムの設計を行うのに対し、機械設計は機械の構造や外観の設計を行います。

順序としては、機械設計が先行して機械の構造や外観が決まり、その物理的な制約を満たすように、配線設計や電気部品の配置などの電気設計が行われます。
他にも、原価計算や使用の確認など、さまざまな場面で機械設計と電気設計は連携をとって機械の設計が進められます。

電気設計職志望者に求められる能力

ここからは、電気設計職を志望する理系学生に求められる能力や素養についてご説明します。

電気工学の基本的な知識

電気設計職を志望するにあたり、電気回路、電磁気学など、大学で学ぶ基本的な電気工学の知識が求められます。
日本の新卒採用はポテンシャル採用であり即戦力を求めているわけではありませんが、入社後に実務を学んでいく土台として、電気工学の基本的な知識が必要となります。

CADなどの知識

電気設計の業務には、CAD(Computer Aided Design)と呼ばれる設計や製図に使用されるソフトが使用されます。
一般的にCADは難しいといわれることが多く、使いこなすまでには時間がかかります。
研究や授業などでCADの知識があると、有利に選考を進められるでしょう。

論理的思考力・説明力

大規模で複雑なシステムの設計や、起きた問題を整理して分析するなど、電気設計職には論理的思考力が求められます。
また、チームで設計に取り組んだり、他部署と連携を取る機会もあるため、論理的に考えるだけでなく、他社にわかりやすく説明する能力も求められます。

電気設計職のおすすめポイント

就職先が豊富

近年さまざまな物がIoT化され、モノがインターネットに接続されることで、工場の自動化やスマート家電など、新たな機能やサービスが提供されています。
それに伴い電気設計の複雑さは増していて、ますます電気設計職の需要が増しています。

電気設計職は製造業だけでなく、建築、情報通信、交通、エネルギーなど、幅広い業界で求められる職種です。
そのため電気職志望の学生のニーズは高く、転職をする際にもさまざまな業界に移動することが可能です。

手に職をつけられる

電気設計には専門的な知識とスキルが必要であり、業界全体としては人手不足の状態が続いています。裏を返すと、電気設計の知識は一度身につけると食いっぱぐれにくい専門性だといえるでしょう。

先ほどご説明した通り電気設計職は多様な業界で求められているため、一つの業界に固執する必要なく、自分が興味のある業界に移動しやすい職種だといえます。

まとめ

いかがでしょうか。
電気設計職の概要から、仕事内容、求められる能力、おすすめポイントまでご紹介しました。

電気設計の役割は機械を動作・制御するための設計をすることであり、手順を大まかに説明すると、電気部品の選定→回路設計→配線の設計→制御ソフトの設計となります。
電気設計職のおすすめポイントは、専門性の高さから手に職をつけられることと、IoTなどにより重要度が増している業界にも関わらず、人手不足により需要が高まっていることにあります。

この記事を読んで電気設計職に興味を持った方は是非、説明会の参加やOB・OG訪問等をしてみてください。
職種名は同じでも企業によって担当範囲や業務内容は変わるため、職種名だけでエントリーするのではなく、その企業では具体的にどんな業務を担当しているかまで調べたうえで応募するようにしましょう。

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