安定した需要基盤を誇る紙・パルプ業界 製造工程から今後の動向まで詳しくご説明します!

2024年3月12日 更新

序文

紙・パルプ業界は、紙や紙の原料となるパルプを製造し一般消費者や企業向けに販売している業界です。

雑誌や書籍、ティッシュ、容器、段ボールなど、紙はさまざまな製品に使われています。

今回は応用される領域が広く、安定した需要基盤のある紙・パルプ業界についてご紹介します。

紙・パルプの種類

紙とパルプには、それぞれ多種多様な種類があります。紙・パルプ業界について説明する前に、まずは紙・パルプはどのようなものであり、どんな種類があるかをご説明します。

パルプ

パルプとは、紙や厚紙、ダンボールの原材料となる繊維(セルロース)のことを指します。パルプの種類は製法や原材料によって異なります。

木材パルプ

木材パルプとは原料となる木材を加工して得られるパルプのことで、製造方法によってさらに機械パルプと化学パルプに分類されます。

機械パルプは、木材を機械によって細かく砕いてパルプを製造します。

木材の大部分をパルプとして使えるため原料の利用率は高いですが、木材にはリグニンという植物細胞壁が含まれ、紙として使用すると時間の経過とともに黄色く変色するという特性があります。

そのため、機械パルプは新聞や雑誌などの短期間で消費される紙製品に多く使われます。


化学パルプは、化学薬品で木材からリグニン(植物細胞壁)を除去して作られたパルプで、色が白く耐久性が高いことが特徴です。

化学パルプはさまざまな紙の原材料として使われ、印刷用紙やノート、包装紙、ティッシュなどの製造に使われます。

非木材パルプ

非木材パルプとは、木材以外の植物素材を原料として利用したパルプで、サトウキビの絞りかすや藁など畑の副産物から作られることが特徴です。

木材パルプと比べ白色が弱く、和紙や容器として使われることが多いです。

木材系と比べて原料の収穫量が少なくコスト面に課題はありますが、森林の保護につながることから注目されている素材です。

再生パルプ

再生パルプは、古紙や紙くずを原料としてリサイクルして作られたパルプで、包装紙や新聞紙、ティッシュ、トイレットペーパーなどに使われます。

古紙を再利用するため、他のパルプと比べて硬い紙が作られやすいことが特徴です。

非木材系パルプと同様に、環境への優しさから注目されています。

紙は、紙と板紙に大きく分類されます。

馴染み深い紙ですが、改めてその概要からご説明します。

パルプを平らに押し固めて乾燥させたものであり、一般に厚さが薄いのが特徴です。紙の種類には、以下のようなものがあります。

・新聞用紙

・印刷用紙

・包装用紙

・衛生用紙

板紙

板紙は、パルプや再生パルプを重ね合わせて厚くしたものであり、厚さが特徴です。板紙の種類には、以下のようなものがあります。

・段ボール原紙

・紙器用板紙

紙の製造工程

ここでは、木材がパルプを経て、紙が作られる工程についてご説明します。紙・パルプの製造工程は複雑であるため、わかりやすく簡略化してご説明します。

パルプの製造

まずは木材を細かいチップ状に砕き、釜で薬品と煮込むことでリグニンなどの成分を分解し、バラバラの繊維を作ります。

繊維を洗ってゴミを取り除き、さらに薬品で漂白を行います。

再度洗浄し、乾燥機で乾燥させるとパルプが完成します。

叩解(こうかい)

紙を製造するために、まずはパルプを叩解(こうかい)という手順で細かくします。叩解とは文字の通り、木材を機械や槌などで叩くことで木材の繊維を細かくほぐしていく工程のことです。

繊維がさらに細かく分解されることで、紙にする過程で繊維同士が結合しやすい状態になります。

抄紙(しょうし)

次に、抄紙(しょうし)という手順で繊維を薄いシート状にします。

水で希釈され均一になった繊維が紙機のワイヤーパート(ワイヤーが金網のように張り巡らされている部分)に噴出され、繊維が平らに配列されます。ワイヤーの下に水が流れ出て、均一なシート状の繊維を作ることができます。

シート状にした繊維はプレスパート、ドライヤーパートを経てさらに脱水され、最後に用途に応じてカットされます。

仕上げ

最後に材料を塗布することで紙の表面をなめらかにしたり、表面強度を上げるといった仕上げを行います。

これらの仕上げ工程を通じて、紙の外観、手触り、強度、印刷適性などが調整され、最終的な紙製品が完成します。

紙・パルプ業界の現状

ここまでで紙の製造までの概要をご紹介してきましたが、ここからは紙・パルプ業界の現状についてご紹介します。紙・パルプの生産量の推移を図(出典:経済産業省「生産動態統計」)に示します。

紙・パルプのどちらも、合計での消費量は減少傾向にあります。

中でも顕著に減少しているのが印刷・情報用紙であり、オフィスのペーパーレス化や、新聞をはじめとする紙媒体がデジタル化に移行してきたため紙面での発行量が減少したことなどが大きな要因となっていると考えられます。デジタル化の進展と環境意識の高まりから今後もペーパーレス化に伴う印刷・情報用紙の消費の減少傾向は続いていくことが想定されます。

コロナ禍での経済停滞も相まって全体として減少傾向にある紙・パルプの消費量ですが、今後消費量が増加していく見込みのある分野もあります。

注目されている分野の一つが包装用紙です。環境負荷の観点からプラスチックによる包装を減少させる動きがあり、その代わりとして包装用紙の使用が増加しています。

もう一つが段ボール原紙であり、オンラインショッピングの増加によって、ダンボール箱などの包装材の需要が高まっています。

紙・パルプ業界の職種

紙・パルプ業界の技術系の職種としては、

①数年後の新製品に繋がるような技術の研究をする「研究・開発職」

②紙・パルプを生産するプラントの機械設備を設計する「生産技術職」

③工場で作られる紙・パルプの品質や生産効率を管理する「品質管理・生産管理職」

などがあります。

採用において優遇される可能性がある理系の専攻分野は、紙やパルプの基礎研究に直接的に関連する生物、材料、農業、化学系の専攻だけでなく、紙・パルプを生産する機械設備を設計するために必要な機械、電気系の専攻も求められます。

一概に紙・パルプ業界といっても企業によって採用している職種や仕事内容は異なるため、よりマッチしている企業を見つけるためにも、どんな製品を作っていて、どんな職種があるのかを事前に下調べしておくようにしましょう。

紙・パルプ業界の今後の動向

環境への取り組み

紙・パルプ業界は、世界的な環境意識の高まりの影響を大きく受けています。

温室効果ガスの削減が求められる中、ペーパーレス化が進展し、オフィスでの書類や報告書の印刷が減少しました。

加えて、デジタル技術の進化により、一般の消費者も紙を必要とする場面が減少しています。こういった社会の動きによって印刷・情報用紙の消費が大きく減少しています。

環境への意識からペーパーレス化が進展する一方で、環境保全の観点から紙製品の利用が見直されている側面もあります。

プラスチック製の製品が環境に与える影響が大きいことから、より環境に優しい素材として紙が注目されています。
包装用紙や紙容器、紙ストローはリサイクルが可能で、自然に分解されるため、環境に与える負荷が少ないとされています。

オンラインショッピングの普及

オンラインショッピングの急速な普及が、紙・パルプ業界にとっても大きな影響を与えています。

特に、商品の配送や保護を目的とした包装材の需要が増加しており、このトレンドは今後も続くと見られています。

ダンボールや紙製の包装材は、環境負荷が低いだけでなく、リサイクル率も高いため、環境に優しいとされています。特に、ダンボールのリサイクル率は90%を超えるなど、持続可能性の高い素材として評価されています。

まとめ

今回は紙・パルプ業界の紹介として紙・パルプ概要から、紙の製造工程、業界の現状や今後の動向についてご説明しました。

紙はさまざまな製品に使われており安定した需要基盤がありますが、ペーパーレス化やコロナ禍による経済停滞によって消費量は減少傾向にあります。

しかし、オンラインショッピングにおける段ボール利用量が増加していたり、プラスチックの代替品として、包装用紙や紙のカトラリーが利用されたりなど、今後伸びていく見込みのある分野もあります。

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