理系就活生に人気のSIerとは?業界の特徴から人気の理由までご説明します!

2024年3月12日 更新

IT業界は理系就活生に非常に人気な業界ですが、情報処理サービス業界(System Integration業界、以下SI業界)は非情報系の理系学生に特に人気な業界だと言えます。
IT業界未経験の非情報系学生でも採用されやすいという点や、採用枠の広さがその人気の理由となっています。

今回はSI業界について、業界の特徴や問題点をご説明したうえで、理系就活生へのおすすめポイントをご紹介します。

SI業界とは

SI業界は、顧客のニーズや要件に基づき、情報システムの企画・設計から開発、導入、運用・保守までの一連の流れを提供する業界です。
この業界の企業のことをSIer(System Integrator)と呼び、代表的な企業にNTTデータ、富士通、IBMなどがあります。

具体的には、銀行のATMシステム、官公庁の公共オンラインサービスなど、私たちの日常生活を支えるさまざまな情報システムはSIerによって作られています。また、これらのシステムを動かすためのITインフラという基盤(サーバー、ネットワーク、データベースなど)の導入も行います。

SI業界の主な業務は、情報システムの企画段階から始まります。顧客のビジネス戦略や目的を理解し、それに合わせたシステム設計を行うことが求められます。設計段階では、システムの機能や性能、セキュリティ要件などを詳細に検討し、それらを満たすための最適な技術選定が重要です。

開発フェーズでは、システム設計で定められた要件を具体的な機能に変換する作業が行われます。要件に基づいたコードの作成だけでなく、システムのパフォーマンスとセキュリティの最適化、作成したシステムのテスト、ITインフラの導入を行います。

技術的な知識が求められるのはもちろんですが、開発は基本的にチーム単位で行うため、プロジェクト管理能力やコミュニケーション能力が求められます。
システム導入後は、運用・保守フェーズが始まります。システムが安定して動作し続けるように保守管理し、必要に応じてシステムをアップデートします。

SI業界のビジネスモデル

SI業界のビジネスモデルは、一般的に「人月商売」として知られています。このモデルでは、開発するシステムそのものの対価として報酬が支払われるのではなく、開発に要する作業時間(人月)に基づいて評価し、報酬が支払われます。

このモデルによって、システムに詳しくない顧客でもコストの内訳が明確になるといった利点はありますが、プロジェクトの期間やスタッフの数が直接的な収益に結びつくため、効率的な作業の動機が生まれにくいという側面もあります。

SI業界の多重下請け構造

SI業界の大きな特徴として、多重下請け構造が挙げられます。

この構造は、プロジェクトが複数の企業によって段階的に分担される仕組みを指し、それぞれの企業が異なる階層で異なる役割を担います。以下にこの構造を表した図を示します。

一次請けは、通常大手のSIerが担い、クライアントと直接契約を結びます。この企業はプロジェクト全体の管理・調整の役割を持ち、大規模なシステム開発や統合プロジェクトの全体計画を立案します。一次請けの企業は、顧客の要望を理解し、それを技術的な仕様に落とし込む役割を果たします。

二次請けは、一次請けに次ぐ階層で、特定の業務やプロジェクトの一部分を担当します。これらの企業は、一次請けからの指示に基づいて開発チームのマネジメントやシステム開発、ネットワーク構築などの作業を行います。二次請けは、一次請けと比べて特定の技術領域や機能に特化した役割を担うことが多いです。

さらに三次請けと続き、これらの企業はさらに細分化された業務を担当します。例えば、ソフトウェアの開発、システムのテスト、データ入力など、非常に専門的かつ限定的な作業を行うことが一般的です。

多重下請け構造の問題点

多重下請け構造の問題として、情報の伝達と品質管理の難しさが挙げられます。プロジェクト情報は一次受けから下請け企業へと段階的に伝わるため、途中で情報が歪む可能性が高まります。これは最終的な製品の品質に影響を及ぼす可能性があり、特に複雑なシステムではこの問題が顕著になります。

さらに構造が複雑であるほど問題の発生場所を突き止めることも難しくなり、根本的改善が図りにくいというデメリットもあります。

また、上流の企業から下流の企業へと進むにつれて、各階層の企業がそれぞれの利益を取り分けます。この過程で、最終的に下請け企業に支払われる金額は大幅に減少し、特に末端の下請け企業では利益が極めて小さくなります。この結果、末端の下請け企業は低賃金で労働力を確保せざるを得ず、従業員は厳しい労働環境に置かれることがあります。

もちろん多重下請け構造をとることで、繁忙期などに柔軟に人材を増やしやすいことや、プロジェクトを分担することでそれぞれの企業が得意な専門領域に注力できるといったメリットもありますが、問題点も含んでいることは知っておきましょう。

一次請け企業のメリット

一次請け企業は、クライアントから直接ヒアリングを行い、システム全体の設計や、プロジェクトの方向性の決定など、プロジェクトの様々なことへの決定権があります。
このように上流工程から関わり、顧客のニーズを汲み取りシステムの設計に落とし込んでいくことができるのは一次請けならではの特徴だといえます。

また、一次請け企業はクライアントから直接受注する立場にあるため、利益率が高くなり、その分従業員の待遇も良くなりやすい傾向にあります。

一次請け企業のデメリット

クライアントから直接案件を請けている立場であるため、非常に責任が重いことはデメリットといえるかもしれません。大規模なプロジェクトの場合一次請け企業が直接全員をマネジメントすることはもちろんできませんが、プロジェクト内で問題が発生した場合は一次受け企業が責任を負う必要があります。

また、プログラマーとして開発に関わる時間が少ないというのも、デメリットといえます。
一次請け企業はプロジェクトをマネジメントをするのが主要な役割であるため、大規模なプロジェクトであればあるほど、開発を担当する機会は少ないでしょう。

もちろん開発とマネジメントの比率は企業やプロジェクトによっても異なりますし、どちらの業務を好むかも人によって異なります。

重要なことは、志望している企業の業務内容と自身のやりたいことがマッチしていそうかを、説明会やOB訪問の中で事前に確認しておくことです。
その際、「〇〇という業務は経験できますか?」という定性的な質問の仕方ではなく「、〇〇という業務を経験できる案件比率を教えてください」といった定量的な質問をするようにしましょう。

下請け企業のメリット

下請け企業におけるメリットの一つは、プログラマーとして開発に関わる時間が多いことです。これにより技術的なスキルを磨き、専門性を深めることができます。

二次請け企業が開発チームのリーダーを担当し、開発よりもマネジメントの比率が高くなることもありますが、一次受け企業に比べて開発の時間が多いことは、技術力を高めていくうえでメリットであるといえます。

下請け企業のデメリット

下請け企業のデメリットは、一次請け企業から案件を請けている立場であり、プロジェクトにおける権限や待遇で劣ってしまう点です。

下請け企業が案件を請けるためには、企業の専門性や信頼性はもちろん重要ですが、価格の安さも重要な要素となります。その結果、安い報酬で案件を請けてしまい厳しい労働環境になったり、案件を他社に委託されて売り上げを失ったりといったことが起こります。
ただ、一次請けや二次請け企業と強固な信頼関係を作ることができた場合、営業や広告を打たなくても安定して案件を受注することができるといったメリットもあります。

以上のように、一次請け企業と下請け企業それぞれにメリットとデメリットがあり、一次請け企業の方が必ずしも良いというわけではありません。

また、一次請けと下請けの両方の案件を持つSIerや、一次請けだが開発を経験しやすいSIerなど、企業によって特徴は大きく異なります。
企業研究を行い、自身の希望に合っているのかどうかを見極めることが重要になります。

SI業界の分類

SI業界の企業はユーザー系、メーカー系、独立系の3つに大きく分けることができます。それぞれについてご説明します。

メーカー系SIer

メーカー系SIerは、主にハードウェアメーカーが親会社となっています。そのため、ソフトウェアに親会社のハードウェアを組み合わせた提案をすることができる点が特徴です。
親会社のシステム開発だけでなく、外部の会社のシステム開発も請け負います。

NECや富士通などがメーカー系SIerに該当します。

ユーザー系SIer

ユーザー系SIerは、親会社がハードウェアメーカー以外の銀行や商社などであるSIerのことです。企業のIT部門が独立して設立された会社がこれに該当します。
外部の案件を扱うこともありますが、メーカー系と比べて親会社のシステム開発が占める割合は高くなります。親会社が大企業であることが多く、安定した経営基盤があることが特徴です。

NTTデータや電通国際情報サービスなどがユーザー系SIerに該当します。

独立系SIer

独立系SIerはメーカー系やユーザー系と異なり、親会社を持たないSIerのことです。
親会社を持たないため安定性で劣る場合がありますが、特定の製品に依存せず、多様な製品を組み合わせた提案をすることができる点や、幅広い業界の案件を受けられるといったメリットがあります。

オービック、大塚商会などが独立系SIerに該当します。

SI業界の技術系の職種

SIerにおける技術職は、情報システムの設計から実装、運用に至るまでの一連の技術的な業務を担当します。

システムエンジニア (SE)

システムエンジニアは、まずは情報システムの要件定義や基本設計などシステムの大枠を決定します。要件定義では、システムが実現すべき機能や仕様をリストアップするなど、技術的な内容ではなく、ビジネス的な側面から内容を取りまとめます。
基本設計では、要件定義で明確にされた要求を基に、使用する技術の剪定や、データベースの設計など、技術的にどのように実現するかを計画します。

その後、プログラムのコーディングによってシステムを具体的に構築する作業を進め、最終的に構築されたシステムが正確に動作するかをテストします。
要件定義や基本設計などシステムの大枠を決める工程を上流工程、開発やテストなどコードを書く工程を下流工程と呼びます。

一次請けのSEは上流工程をメインで担当することが多く、コードを書くための知識だけでなく、システムの要件を正確に理解する力や、開発チームを束ねるマネジメント力が求められます。
下流工程は2次請け、3次請け以下のSIerや、エンジニアの技術提供をする企業であるSES(System Engineering Service)が担当することが多いです。

インフラエンジニア

インフラエンジニアは、必要なハードウェア、ネットワーク、ストレージなどのITインフラの構成を計画します。サーバのセットアップ、ネットワークの設定、ストレージの確保など、システムが稼働するための基盤を整備し、構築されたインフラの運用を監視します。トラブル発生時の対応やパフォーマンスの最適化もその役割に含まれます。

理系就活生へのおすすめポイント

情報系以外の理系学生も採用されやすい

SI業界は、技術力だけでなくプロジェクトを取りまとめるマネジメント力やコミュニケーション能力が求められるため、未経験の理系学生でも採用されやすいです。

上記で挙げた能力だけでなく、システムの設計やプログラミングをするうえで重要な論理的思考力など社会人の基礎とされる能力や素養は求められますが、IT系の他の業界に比べて入社時点での専門性は比較的優先度が高くないといえます。

即戦力を前提として採用をしていないため、しっかりとした研修体制やキャリアサポートが整っている場合が多いです。

大手企業の採用数が多い

SI業界は大手企業が多数存在し、それらの企業が新卒採用を盛んに行っているのが特徴です。大規模プロジェクトを手がけるため新しい人材を常に求めており、このため採用枠が比較的大きいです。

他業界への影響力が大きい

これはIT業界全体にいえることですが、IT業界は技術発展が早く、かつ他の業界にも大きな影響を及ぼす業界です。
エンジニアとして業界に関わることで、IT技術を利用するだけでなく、実際に作る側に回ることができます。

例えば、最近話題に上がることの多いChatGPTの基となるGPT-4という大規模言語モデルを使ったサービスがITエンジニアによって多く生み出されており、実際に語学学習アプリや、ES添削アプリなどが作られています。

今やITは全ての業界で必須になっているといっても過言ではなく、まだデジタルトランスフォーメーションが進んでいない領域に適用することで、イノベーションを起こせる余地があります。
このように、IT業界でのエンジニアの経験と知識はどんな業界に進出しても価値を発揮することができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

SI業界は多重下請け構造という業界特有の構造を持ち、企業がどの階層に当たるかによって業務内容や環境は大きく異なります。
一次請け企業が必ずしも良いというわけではなく、どちらにもメリット・デメリットがあるため、それぞれの特徴を知り、自身の希望がどちらに合うかを考えることが重要になります。

IT業界に興味のある理系学生必見!全体像と業界ごとの魅力をご説明します」にて、SI業界以外の4つの業界についてもご説明していますので、この記事を読んでIT業界に興味を持った方は是非読んでみてください。

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