炭素繊維で世界トップシェア!繊維業界を詳しく解説

2024年3月12日 更新

繊維業界は繊維の生産、加工、販売をしている業界です。
繊維は様々な製品の基となる素材として使われており、衣類やファッションアイテムだけでなく、不織布マスクやガーゼなどの医療用テキスタイル、車のボディなど、様々な業界へ供給をしています。

今回は繊維業界について、繊維の種類から製造工程、業界の現状や業界構造、技術系の職種をご紹介します。

繊維の種類

天然繊維

天然繊維は、自然界から直接得られる繊維であり、動物や植物由来の繊維があります。
天然繊維は品質の高さと環境に優しい特性から、多くの高級製品で採用されています。

これらの天然繊維は、合成された化学繊維に比べてコストが高くなる傾向にありますが、その価格に見合った品質と環境への優れた配慮から、様々な製品に使われています。

動物繊維

動物由来の繊維で、温かさと柔らかな手触りが特徴です。羊毛、カシミア、絹などがこのカテゴリーに含まれます。
冬服や高級品でよく使用され、その高品質ゆえに価格も高めです。

植物繊維

植物由来の繊維で、通気性がよく、肌触りが良いとされています。綿(コットン)、麻(リネン)、ジュートなどがこのカテゴリーに含まれます。
夏服やカジュアルウェアで人気があり、比較的手頃な価格帯も多いです。

化学繊維

化学繊維は、人工的な方法で製造される繊維で、特定の性質を持たせることが可能です。
一般的に化学繊維は天然繊維よりも低コストであり、大量生産が容易です。

再生繊維

天然繊維を基にして作られる化学繊維で、植物繊維(セルロース)を化学溶剤で溶かし、紡糸と呼ばれる工程で糸状に成形して繊維が作られます。
自然な質感を保ちつつ、特定の性質を強化したい場合に使用され、レーヨンやリヨセルなどがこのカテゴリーに含まれます。

主に自然な質感を持つ衣料品で用いられ、Tシャツ、ドレス、ベッドリネンなどに使用されることが多いです。

合成繊維

合成繊維は、石油を基にした小さな分子(モノマー)という原料から合成される繊維です。このモノマーは化学的に反応して高分子化合物(ポリマー)を形成し、それが最終的に繊維となります。
ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アクリルなどがこのカテゴリーに含まれ、強度や耐久性が求められる用途で多用されます。
スポーツウェア、カーペット、自動車の内装、アウトドア用品などに多く使われます。

半合成繊維

天然繊維を基にして作られる化学繊維で、天然繊維を初めに取り出し、特定の化学処理で改質します。
アセテートやトリアセテートなどがこのカテゴリーに含まれ、自然な質感を保ちつつ、特定の性質を強化したい場合に使用されます。
豪華なカーテン、デザイナー服、特殊なフィルターなどに使用されます。

無機繊維

金属や石などの無機質から作られる繊維です。ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維などがこのカテゴリーに含まれ、特に高温・高圧環境や工業用途で使用されます。
航空機部品、自動車の強化部材、火災防止材などに用いられます。

繊維の製造工程(紡績)

天然繊維

天然繊維の製造工程は以下の通りです。

・収穫・採取:植物繊維の場合は綿花や麻を、動物繊維の場合は羊毛や絹を採取します。
・選別・洗浄:収穫した原料を選別・洗浄し、不純物を取り除きます。
・カーディング:洗浄された繊維はその後、カーディング機という回転するブラシによって一方向に整列されます。
・紡績:紡績機によって繊維を糸に紡ぎます。紡績機は繊維を引っ張りながら高速で回転させ、個々の繊維が絡み合って一本の糸になるようにします。

化学繊維

化学繊維の製造工程は以下の通りです。

・原料調整:化学繊維に使用する原料の純度を調整します。再生繊維、半合成繊維は天然繊維が、合成繊維はモノマーが、無機繊維は金属やガラス、炭素などが原料として使用されます。

・溶解:原料を化学反応により溶解させます。

・紡糸:溶解液を紡糸口から押し出し、固化させて繊維を作ります。

・延伸・加工:紡糸された繊維をさらに加工して、所望の特性(強度、伸縮性、色など)を持たせます。一定方向に引っ張りながら加熱する延伸による強度と伸縮性の向上や、コーティングによる防水、抗菌性の付与など、繊維に特性を持たせるための様々な加工手法があります。

繊維が製品化されるまでの工程

ここまでご説明した紡績という工程で繊維を糸にした後、製品化されるまでにはたくさんの工程があります。

・織物・編物製造:繊維から作られた糸は、織機または編み機で布に変えられます。

・染色:作られた布は、色をつけるために染色されます。

・裁断:染色と仕上げが終わった布は裁断されます。この工程で、布は製品に適した形に変えられ、服の製造の場合は、服の前面、背面、袖などに形が合うように裁断されます。

・縫製:裁断された布片は縫い合わせられ、最終的には一枚の服として組み上げられます。服の製造の場合、この段階でボタン、ジッパー、その他のアクセサリーも取り付けられます。

繊維業界の業界構造と特徴

以上のように、繊維が製品化されるまでにはたくさんの工程が存在します。これらの各工程は高度な専門技術を要するため、特定の工程に特化した企業や部門が多く分業化が進んでいます。

このような多段階で複雑な業界構造が繊維業界の特徴であり、サプライチェーンの複雑性や、品質管理の困難性、コスト構造などに影響を及ぼしています。

サプライチェーンの複雑性

原料の調達から最終製品の販売までの工程は異なる地域や国で行われることが多く、その結果、リードタイム(注文から納品までの時間)が長くなる可能性があります。
長いリードタイムは、市場の動きに迅速に対応できないというリスクを高めます。
さらに、各工程における在庫管理も複雑になるため、在庫リスク(在庫の過剰や不足による損失)が高まる可能性があります。

品質管理の困難性

多様な供給元が関与する繊維の製造プロセスでは、品質を一貫して管理するのが非常に難しいです。特に、各工程が地理的に離れた場所で行われる場合、品質の差が生じやすく、最終製品に影響を与える可能性があります。

高コストな業界構造

繊維製品は工程ごとに分業化されていることが多く、各段階で商社や卸商が介在することでコストが高くなりやすいです。

さらに、二次卸商も介在していることも多く、分業化されていることが高コスト構造に繋がっています。

繊維業界の現状

ここまで、繊維の種類と製造方法、繊維業界の業界構造についてご紹介しました。
ここからは繊維業界の現状についてご紹介します。繊維の生産量の推移を図(出典:経済産業省「生産動態統計」)に示します。


日本の繊維業界は近年は生産量が減少傾向にあります。この減少は、多くの要因に起因していますが、特に労働コストの上昇と近隣諸国の伸びが影響しています。

さらに、新型コロナウイルスの影響で需給が不安定になり、業績が悪化しています。

一方で、世界の繊維市場は将来的な成長が見込まれています。特に、急速な経済成長を遂げている新興国での消費が増え、繊維製品に対する需要は高まっています。これにより、繊維業界自体は将来的な成長が見込まれる市場とされています。

しかし、近年では中国や他のアジア諸国の世界シェアが伸びており、中国は50%以上の世界シェアを持っています。中でも、2大化学繊維と言われているポリエステルとナイロンのシェアは7割以上と非常に高い割合となっています。

こうした激しい価格競争の中、日本の繊維メーカーは炭素繊維やガラス繊維といった高付加価値な繊維に力を入れており、中でも炭素繊維は世界トップシェアを誇っています。

世界トップシェアを誇る日本の炭素繊維

炭素繊維は高い強度と剛性を持つ繊維状の材料で、非常に軽く、強度は鋼鉄の数倍にも及びます。

軽く頑丈であるその特性から、炭素繊維は航空機の部品から、次世代の自動車、さらにはプロのスポーツ用品まで、幅広く活用されるようになりました。特に航空業界や自動車業界では、燃費向上のための軽量化が求められる中、炭素繊維は欠かせない要素となっています。

炭素繊維の普及はPAN系炭素繊維の発見を契機にして大きく前進しており、日本はPAN系炭素繊維の実用化において重要な役割を担っています。

日本の研究機関と企業が先駆けとなってPAN(ポリアクリロニトリル)という当時注目されていた合成高分子を炭素繊維に応用し、PAN系炭素繊維という軽量で強度の高い炭素繊維が生み出されました。
その後PANの品質向上や、PANを炭化する熱処理工程、炭素繊維の表面をコーティングするサイジング技術など様々な研究が行われ、繊維の強度や耐久性が向上していきました。

このように性能が向上したことで、当初はスポーツ用品や航空機部品に使われていた炭素繊維が、産業機械や船舶、自動車部品や風力発電のブレードなど、少しずつ商用利用の幅を広げていきました。

初期からの研究と開発に注力してきたことで、日本製の炭素繊維は世界中でその品質と技術力を認められ、多くの国々に輸出されています。現在、日本は炭素繊維の生産において世界トップのシェアを誇り、これからもその地位を維持し続けることが期待されています。

繊維業界の技術系職種

繊維業界の技術系の職種としては、

①数年後の新製品に繋がるような技術の研究をする「研究・開発職」

②繊維を生産するプラントの機械設備を設計する「生産技術職」

③工場で作られる繊維の品質や生産効率を管理する「品質管理・生産管理職」

などがあります。

採用において優遇される可能性がある理系の専攻分野は、繊維の基礎研究に直接的に関連する生物、化学系の専攻だけでなく、繊維を生産する機械設備を設計するために必要な機械、電気系の専攻も求められます。

一概に繊維業界といっても企業によって採用している職種や仕事内容は異なるため、よりマッチしている企業を見つけるためにも、どんな製品を作っていて、どんな職種があるのかを事前に下調べしておくようにしましょう。

品質管理職、生産管理職ついては以下の記事でそれぞれ解説していますので、職種について興味のある方はぜひご覧ください。
・品質管理職:「安全な製品を世に届けている「品質管理職」の仕事内容とは?

・生産管理職:「メーカーの生産工程のパイプ役「生産技術職」についてご紹介します

まとめ

今回は繊維業界の紹介として繊維の種類から、繊維の製造工程、業界構造と特徴、業界の現状についてご説明しました。

繊維は製品化されるまでに様々な生産工程があり、それぞれの工程で高い技術力が求められます。そのため業界は特徴的な多層構造となっており、この構造がサプライチェーンの複雑性や品質管理の困難性、高コストなど様々な影響を与えています。

繊維全体における生産量は減少傾向にありますが、炭素繊維で世界トップシェアなど、日本の繊維メーカーは高い技術力を要する繊維において強みを持っています。

この記事を読んで繊維業界に興味を持った方は是非、説明会の参加やOB・OG訪問等をしてみてください。

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