安全な製品を世に届けている「品質管理職」の仕事内容とは?

2022年11月6日 更新

就職活動をする際、どの業界を志すかも重要ですが、それと同じくらいどの職種に応募するかも重要です。
技術系の職種は、専門性を突き詰めるものが多いため、職種の選択によって入社してからの働き方が大きく変わります。そのため、就活の段階で広く職種について理解し、前もって興味のある職種について知っておくことが大切です。

今回は数ある職種の一つであり、製造業において重要な役割を果たしている品質管理についてご紹介します。

品質管理の概要

まず、はじめに品質管理の概要を生産管理や品質保証との違いについて触れながら、分かりやすくご説明します。

品質管理とは

品質管理とは、製品の品質を保証及び向上させるために、企画から生産まで一連の流れを管理することです。
主に製造業の生産過程で行われていて、製品が一定の品質を超えているか検査したり、製造過程で不良品が出やすい部分を検知して、改善するといった管理をします。

品質管理と生産管理の違い

品質管理、生産管理のどちらも製造現場の管理に関連する職種です。

生産管理の管理対象として、製品の品質(Quality)、原価(Cost)、納期(Delivery)の3つの要素があり、頭文字をとってQCDと呼ばれています。
これらの3つの要素の最適化を目指し、生産計画を立て、製造工程を管理します。

生産管理は品質、原価、納期の3つの要素を考え、管理するのに対し、品質管理は品質にフォーカスして管理します。

つまり、品質管理は生産管理の幅広い業務の一つであるといえます。

なお、企業や製品によっては、品質管理を1つの職種として設けている場合もあれば、生産管理を1つの職種とし品質管理の業務も行う場合もあります。

品質管理と品質保証の違い

企業によっては品質管理のほかに品質保証という職種を設けている場合があります。
品質保証の主な業務内容は、製品が一定の品質を保っていることを保証し、不良品の対応を行うことです。

品質管理は、企画から生産まで一連の流れを管理するのに対し、品質保証は完成した製品の品質の保証にフォーカスした業務です。

つまり、品質保証は品質管理の幅広い業務の一つであるといえます。

品質管理の業務理解

ここでは、品質管理の業務理解を深めるために、業務内容とその手法についてご説明します。

品質管理の業務内容

品質管理の主な業務内容は、工程管理、品質検査、品質改善を行うことで、製品の品質を安定及び向上させることです。それぞれについてご説明します。

工程管理

品質を安定させるためには、製品を作る生産工程の管理をする必要があります。
生産工程に必要な人材、原料、設備などを管理し、不良品を出さずに安定した生産ができる環境を築きます。

作業の標準化(マニュアル化)
技術練度を問わずどの人が行っても同じ品質のものが得られるように、作業内容をマニュアル化します。
ノウハウ及び改善案をマニュアルに随時反映し、作業員と共有することで作業全体の効率や精度が高まります。

教育訓練
マニュアルの手順通りに適切に作業できるように作業員の訓練を行います。確かな品質をつくり込める人材に育成することで、品質の安定を目指します。

設備の維持管理
設備能力を維持し、品質を安定させるための管理を行います。
日常点検、定期点検で、設備に異常がないか確認することで、問題の早期発見を目指します。設備の修理や刃物工具などの消耗品の交換、設備能力が条件を満たしているかの確認、調整も行います。

品質検証

製品の検査や生産工程、工程の管理体制の監視を通して、品質が確かなものであることを保証します。

製品の品質検査
仕入れた原材料や部品の受入検査、製品の生産工程での工程内検査、製品完成後の完成品検査を行います。工程内検査は特に不良品が発生しやすい複雑な工程の後に行うことが多いです。

工程の監視
製品の品質を作りこむ能力を有しているか確認するために、設備や原材料、人材等を含む生産工程全体を監視します。

管理状態の監視
品質マネジメントシステムが運用されていて、工程の管理が正しくなされているかを監視・確認します。
品質マネジメントシステムとは、組織が製品やサービスの品質を向上させるために有効的な仕組みであり、国際認証規格のISO9001などの規格に則って、品質基準の設定や、品質保証をします。

品質改善

生産工程や完成品の中で発生した不良品や設備の不具合の原因究明を行います。また、不良品の再発防止、未然防止のための改善に努めます。
この品質改善には、問題解決ストーリーやQC7つ道具と呼ばれる問題解決の手法を用いることがあります。この2つについては後ほどご説明します。

品質管理の手法

ここでは、代表的な品質管理の手法を3つご紹介します。これらの手法に沿って実行することで効果的に品質管理、改善が行えます。

QC7つ道具

QCはQuality Control(品質管理)の略で、QC7つ道具は品質管理において効果を発揮する7つの統計的手法の総称です。
製造現場の品質管理、改善の手法として広く使われています。
以下にQC7つ道具をそれぞれご説明します。

・グラフ
データを視覚的にわかりやすく表したものです。折れ線、棒、円、帯グラフなどがあります。例えば、不良品の発生頻度を縦軸、横軸にそれの原因と考えられる要因(材料の量など)の変数をとることで、不良品発生の分析ができます。

・ヒストグラム
データを一定の範囲ごとに区切り、それぞれの範囲の中にいくつデータが含まれるかを棒グラフで表したものです。時間や大きさ、圧力等の数値条件が異なる場合のそれぞれの品質の度合いを比較することに適しており、どの条件で製造するのが品質管理上良いかを検証することができます。

・散布図
2つの変数(パラメーター)を持つ1つの事象について、それぞれの変数を変化させた場合のデータを点の集合として、X-Y平面に表したもので、2つの変数の相関関係がわかります。
品質管理においては、ある変化を加えたときに連動する変数が存在するのかを把握でき、製品特性を理解することに繋がります。

・パレート図
項目ごとの棒グラフと各項目の値を累計値で割った比率を折れ線グラフで表した図です。例えば、各工程を、製造過程でエラーがでる回数の多い順に並べ、全体の中での割合を把握することで、重点的に改善が必要な工程を洗い出すことができます。

・特性要因図
結果に至った要因を書き出し、その結果への影響が大きい要因を可視化した図です。不良品の発生に最も繋がりやすい要因の把握ができます。

・管理図
品質や工程の管理状態を示す図です。横軸が時間、縦軸の中心が目標値、その上下に上限値と下限値の軸をとった折れ線グラフです。これによって、製造工程の安定性の度合いを把握できます。

・チェックシート
点検や記録に使われ、必要な項目のデータ収集に使われます。単純に管理のためのチェックシートとしても使われますが、さまざまなエラーが出る場合には、どのエラーが発生しやすいのかといった傾向を把握し、課題対策の優先順位を見定める時に有用です。

問題解決ストーリー

品質に関する問題を解決する際に問題解決ストーリーという手順に従うことで効果的な品質改善が行えます。
問題解決ストーリーに従って実行するとき、QC7つ道具の中の適切なものを活用すると効果的です。以下に手順と概要、適したQC7つ道具をご紹介します。

①テーマ選定(パレート図)
品質において数ある問題の中から、最も重要で解決すべき問題をテーマに設定します。

②現状把握と目標の設定(グラフ)
設定したテーマに関して現在の状態を確認し、適した目標を設定します。

③活動計画の作成(グラフ)
目標について活動する期間とどのくらいの成果を挙げるのかを計画します。

④要因の解析(特性要因図、グラフ、チェックシート、ヒストグラム、散布図、管理図)
設定したテーマについて、問題となった原因を解析します。

⑤対策の検討と実施(特性要因図)
要因の解析を基に効果的な対策を検討し、実施します。

⑥効果の確認(ヒストグラム、散布図)
実施した対策が目標を達成し、改善されているかを確認、評価します。

⑦標準化と管理の定着(チェックシート、管理図)
対策を行い効果が得られたら、その対策を標準化します。

PDCAサイクル

PDCAサイクルは品質管理の代表的な手法であり、品質マネジメントシステムの国際認証規格のISO9001においても、PDCAサイクルによる継続的改善が求められています。

PDCAサイクルのPDCAは、計画(PLAN)、実施(DO)、確認(CHECK)、改善(ACTION)の頭文字をとったもので、それぞれの意味は以下のようになります。

計画(PLAN):測定可能であり、品質方針に沿った品質目標及び計画の策定  
実施(DO):品質目標達成のための品質管理、改善計画の実施
確認(CHECK):目標と実施した結果との差異をQC7つ道具などを活用して評価
改善(ACTION):新たに発見した課題への解決のアプローチや目標の見直し

これらのフェーズを繰り返すことで効果的に品質管理を行えます。

品質管理に就くために

ここでは品質管理に就くにあたって必要となる資格や向いている人の特徴についてご紹介します。

品質管理に必要な資格とは

品質管理に就くにあたって必要となる資格はありません。
しかし、品質管理について学ぶにあたって有用な資格として品質管理検定(QC検定)があります。4級~1級まであり、実務経験も必要ないので社会人から学生まで幅広く受けられる資格です。

製品の品質に関する様々な問題の対処法についてやQC7つ道具の使い方など品質管理に関する様々な知識を得ることができます。

品質管理に向いている人の特徴

品質管理にはどのような能力を持った人が向いているのかご紹介します。

コミュニケーション能力

品質管理は、製品の品質を守る業務の中で、製品にかかわる様々な部署とコミュニケーションをとります。他部署から情報をもらったり、快く協力してもらうには円滑なコミュニケーションが必要不可欠です。
これらの理由から、品質管理ではコミュニケーション能力が高い人材が重宝されます。

数字に苦手意識がない

品質を評価するとき客観的事実として数値で判断します。
問題発生時に様々な統計的手法を用いて分析するので、品質管理に数字や計算は必要不可欠です。
数字に苦手意識がなく、積極的に数字を扱うことは、論理的に分析や説明するうえで大切です。

リスク管理能力と広い視野

品質管理は製品の品質を一定に保ち、製品や設備トラブルにもすぐに対処したり、未然に防ぐことが必要です。
生産工程全体を見て、あらゆるリスクを想定する必要があるので、リスク管理能力や広い視野を持つことが求められます。

品質管理の働きがい

品質管理ならではの魅力や働きがいについてご紹介します。

製品を世に送り出す喜び

営業、企画、設計、購買、製造とプロジェクトが進む中で、品質管理は製品を世に送り出す前の最後の品質チェックを行い、合格した製品だけが世に出されます。
企画段階からマニュアル作成等や品質の観点から関わるため、製品への思いも強く、お客様から製品を評価や感謝されたときには非常にやりがいを感じられます。

製品の品質管理を通して企業のブランドイメージを守る

不良品をそのまま世に送り出してしまうと、返金による金銭的な損失だけでなく、企業の信用も失われてしまいます。
製品の品質を担保する品質管理の一番の目的は、お客様からの信用を得て、企業のイメージを守ることです。

品質管理の仕事が製品や企業の価値を守っているという意識や、安心して使える製品をお客様に提供することで社会への貢献を感じられます。

他の部署との連携や仲間との達成感の共有

設計、開発など他部署との関わる機会の少ない職種もある中で、品質管理は製造に関連するあらゆる部署と連携して製品の品質を管理します。
安定した品質の製品を提供するために、部署内や他部署含めチームで一丸となってプロジェクトに取り組みます。製品が完成を見届けられ、達成感を仲間と共有できるのも品質管理の特徴です。

まとめ

今回は製造業の要である品質管理に焦点を当てて、品質管理の概要や業務内容、手法、働きがいまでご紹介しました。品質管理の業務は幅広く、学ぶことも多いですが非常に働き甲斐の感じられる仕事です。
製造業に携わるのであれば、重要な役割を果たしている品質管理について知っておいて損はありません。

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